From dusk till dawn〜日没から夜明けまで〜

□9.【〜ホテルにて〜 side 銀時】
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………は?

…………は?

……………はあぁぁぁっっ??



ちょっと待て。整理しよう。



「わかってる」ってゆった。

「好きだ」ってゆった。

「銀時」ってゆった。



つまりコイツは俺が誰かを承知の上で………好…き………とか…言っ……

だあぁぁぁぁ―――っっ!ワケわかんねぇっ!どーしちまったんだよコイツ!

いったい何がどーなってんだぁっ!

オドロキすぎて頭ん中ァ真っ白。さすがの銀さんもキャパオーバーだよコレぇっ。何も考えらんねぇ。

わかんねぇわかんねぇわかんねぇ…って何がわかんねぇのかもわかんなくなってきたしっ。



 * * *



この時俺は、間違いなくこの日最大の……いや、そんなモンじゃねぇ、近来稀に見るほどのパニックに襲われていた。

よほど混乱をあらわにした顔をしていたんだろうと思う。そこに………。

キスが……落とされる…………。

髪に、額に、瞼に、頬に、優しく…愛おしむようなキスが………。

その合間に繰り返される言葉。

ゆっくりと染み渡らせるかのように注がれる………髪に、額に、瞼に、頬に、キスとともに………。

「好きだ」と。「銀時」と。

何度も、何度も、何度も。



すべての思考が停止して空っぽになったところに、その言葉だけが静かに降り積もっていく。

何故だか泣きそうになった。

“あぁ、コイツ、俺のこと好きなんだな”って、すとんと胸に落ちてきて。そこからじわりと熱が広がってくみたいだった。

土方の言葉には、嘘がない。

いや。「ない」と言える確証なんてどこにもないが……少なくとも俺にはそう思えた。

そのせいだろうか?有り得ねー、とか。冗談だろ、とか。疑ったり訝しんだりする気持ちが跡形もなく消えてゆく。

真っ直ぐなヤツだよなぁ。あちこち捻じくれちまった俺とは大違いだ。

言葉ひとつ……何の含みも持たせないで、それ以上でも以下でもない、その言葉の持つ本来の意味のまま伝えるのって、案外難しいんだぜ?

嘘をつき慣れちまうと特に、さ。それを……スゲーよ、お前。

そんなコイツが……俺を好きなんだってさ。

なんだか擽ったいような感じで落ち着かなくて。

相変わらず顔中にキスを落としてくる土方の唇が、俺の唇の端すれすれのところを掠めるのを感じた瞬間、思わず自分から唇を押し当てていた。



* * *



土方は驚いたように一瞬息を詰めたあと、合わせられた唇を遠慮がちに啄んだ。表面を触れ合わせる程度の軽いキスが繰り返される。

目覚める前の蕩けるようなキスを知っている俺には、それがどうしようもなくもどかしく感じられて…一瞬触れては離れていこうとする土方の唇を追いかけてちゅっと吸ってみる。

と、それを合図にしたように今までとは違う深いキスを仕掛けてきた。それに応えてそっと舌を絡めると、強く吸われてジンと痺れがはしる。

てのひら全体で顎と頬を包み込むようにして時に角度を変え、続けられる激しいキス。まるで喰われてるみたいだ。

誰だかわかってなかったさっきとは状況が違う。相手は土方だってわかってる。わかってるけど…。

気持ちイイ。コイツ…やっぱキス上手ェ…よ……。

頭の奥が痺れたみたいになって、だんだん意識が朦朧としてくる。

呼吸が苦しくなってきたのを感じ取ったのか、いったん離した唇を今度は耳元に寄せ、噛むようにして囁かれる。

「好きだ、銀時……」

「んっっ………あぁっ」

土方の息遣いとその低く響く声が耳を擽り、そこから全身に震えがはしる。不快ではなく、快感によって。つっと耳殻を舌で辿られると、堪えきれずに声が洩れた。

それに煽られたかのように、執拗に耳を弄る土方。甘噛みしたり舌を差し入れたり……あーもうっ!ゾクゾクするっ。ダメだってそれぇっ!!

「…あっ…あっ…それやっめ……息できなっっ…んっ…」

よーやく耳から離れてくれたと思ったら、頸筋に舌を這わせながら、中途半端に開いてたジッパーを下までおろし、脇腹を撫で上げた手で胸全体を撫でさする。

特に敏感なところを触られてるわけじゃないのに、さっきまでの燻っていた熱が一気に蘇り、身体の中心がドクンと脈打つ。

続けて既に勃ちあがった胸の突起を指と舌とで捏ねくられて、全身がビクビクと震えた。

「んっ…んんっ…ふっあ…あぁぁっ……」

もう声を抑えることもできない。すべての刺激が下腹に直結していくのがわかる。

土方もそれに気付いたのだろう。ズボンの上からカタチを確かめるように指を滑らせたあと、布越しにやんわりと撫で始めた。

「はぁ…んっ…んぁっ…あっ…」

土方の手の動きに合わせて、腰が勝手に動いてしまう。もっと……そう、もっと直接的な刺激を欲しがって。

「…ひじっ…かたぁっ……」

名を呼ぶ俺の声は、かなり切羽詰っていたかもしれない。

それに応えるように一気にズボンと下着を取り去った土方が、そこで何故か息を呑んで動きをとめた。




* * *





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