From dusk till dawn〜日没から夜明けまで〜
□10.【〜ホテルにて〜 side銀時】
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長い…溜め息を吐いた土方が、口を開く。
「……やっぱり…嫌か…?そうだよな………」
背中越しに届く声。
が……かけられた言葉が、理解できない。
なに言ってんだよ?嫌なのはテメーだろーが。
「銀時…お前…酔ってたんだよな。さっきまでの態度は…みんな酔いのせいか?今んなって正気に戻ったってワケかよ……?」
あぁ、あぁ、そーだよ、酔ってたさ。酔って…流されて…テメェの言葉に気持ち掻き乱されて……んでたった今目ェ醒めたところだよっ!だから何だよっ!
「酔ってるとこに付け込むなんざ、我ながら卑怯なマネだってなァわかってたんだが、それでもかまわねーって……歯止めが利かなくなっちまったんだ。ずっと………触れたかったんだ、お前に。抱きたかったんだ、お前を……」
あ、そ。そんでそれが全部勘違いだったってワケね。ハイハイ。
「すまねー……こんなん、言い訳にもならねェな……調子に乗っちまって…悪かった。……絶ってー拒否られるって、そう思ってたから、ホントはずっと表に出すつもりなんてなかったんだが………」
そこでいったん言葉を切る。ひと呼吸おいて、土方がふっ…と微笑んだのを背中越しに感じた。
「けどなァ、酔った勢いだろーが、一瞬でもお前が俺を受け入れてくれて、嬉しかった………俺を…求めてくれて、嬉しかったんだ俺ァ……銀時っ、俺ァっお前がっっ」
「言うなっ!!」
なに言うつもりだよ、今さら。まさかまだわかってねーのかよコイツ。やめてくれよ、もう……。
「俺ァお前が好きなんだ、銀時」
「………好き?」
「あァ好きだ。何度も…言ったろ?」
「………好き?あ、そう………好き…ねェ…」
クッと咽喉の奥からくぐもった嗤いが洩れる。こりゃあマジでもっかいちゃんと諭してやんなきゃなんねェみてーだな。
「銀時……信じらんねーかもしれねーが、ノリや悪戯心だったわけじゃあねーんだ。俺ァ本気でお前が…」
「いやァ信じるさ」
「銀とっ」
一瞬弾みかけた土方の声。それを遮って俺は言葉を続けた。
「けどな土方。よく聞けよ?お前の“好き”は恋愛の“好き”とは違うもんなんだよ。お前は俺が好きなんだろう。それを嘘だなんて言うつもりはねェ。だけどそれは友情とか…そーいった種類のモンなんだよ。恋じゃ、ねぇ…。だからもうバカなことは考えんな」
「ンだよ…それ……」
「触れてぇだの抱きてぇだの、そりゃ全部“大いなる勘違い”ってェヤツだったんだ。さっきのことでよくわかったろ?良かったじゃねぇか。その方が正常だよ。まァ…今日のこたァお互い忘れるとしよーぜ」
背中越しの会話……これでこの茶番は終わりだ。
まぁ生きてりゃいろんなことがあるさ。大丈夫。こんなことはなんでもねェ…人生の、ちょっとしたサプライズだと思やァいい……。
* * *
のろのろと服に手を通そうとしたその時、腕を服ごと掴まれて力任せに引き摺り倒された………なっ…!
酔いと快感の余韻で、ろくに力の入らない状態でのこと。倒された後は土方のいいようにされ、簡単にマウントをとられた体勢になる。両手で肩を押さえつけられ…だが項垂れた状態の土方の顔は見えず、ただあの艶々した髪だけが、重力に従って俺の首元に落ちる。
「テメェに……テメェに何がわかるってんだ」
地を這うような、低い、低い、声。激情を押し殺した……それが一転、咆哮に変わる。
「俺がっ、どれだけテメェを……どれだけ心全部でテメェを求めてたと思ってんだっ!他は何も残らねェほど何もかも全部テメェに向かってく気持ちを…どんな思いで抑えてたとっ………どーかなっちまいそうなほど欲してるのに、それでも決して受け入れられることはねェと、諦めろ、と、必死で自分に言い聞かせて…それでも日毎夜毎、テメェを想っちまうのを止められなくてっ……苦しくて苦しくて苦しくてっ……恋じゃねぇだとっ?なんでテメェにそんなことが言えるっ!これが恋じゃねェってんなら、何が恋だって言うんだ!この狂うほどの気持ちを、他になんて呼ぶのか教えろよっ!言ってみろよっ銀時っっ!!」
掴まれた肩を、ガクガクと揺すぶられる。
言葉が………出てこない。
ふいに土方が顔を上げ、真正面から俺を見据えた。その瞳に宿る獣じみた光。……なんだ?これは……。
「言えねーのか?だったらこっちから教えてやるよ。俺の抱えるこの気持ちが、どんなもんなのかを………その後で、それでもお前がそれを友情だと思うんなら、もう俺ァ何も言わねェ…そう思っときゃァいい」
そう言うと、有無を言わせぬ強引さで唇を重ねてきた。
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