From dusk till dawn〜日没から夜明けまで〜

□3.【〜??にて〜side銀時】
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と、そこまでの出来事がわずか数瞬の間にめまぐるしく脳裏に浮かんでは消えた。

さすがピンチの時の走馬灯!……って大事なのはソコじゃなくてェっ!

記憶にあるのはそこまでだ。

とするとアレだ。どーゆうわけかは知らないが、土方のヤツ、あん時の女と俺を取り違えてやがるんだ!そうとしか考えられねぇっ!!

だったら……

唇の表面や歯列を軽くなぞっていた舌をぐっと奥に入り込ませ、さらに深いキスを仕掛けようとした土方の頭を掴んで必死に引き剥がし、顔が見える距離に固定した上で急いで言葉を綴る。

「ぷはっ……ひっ、土方くん?ねェ、ドコのおねーちゃんと勘違いしてるんだか知らないけどっ、銀さんだよ!万事屋のっ。ホラ、よく顔見てっ」

おそらくどこぞのラブホなんだろう。薄暗い間接照明が灯るだけの部屋。

それでも見間違えようのない至近距離で、お互いの視線が絡む。

どーだ?こんだけ間近でばっちり顔見りゃあ、いくらなんでも勘違いに気付くだろ?ん?

しっかし俺とオンナを連れ込み間違えるなんて……途中で気付かなかったのかよ?とんだマヌケだなこりゃ。

ものスゲー酔ってワケわかんなくなってたってコトか…タチ悪ぃ。って連れ込まれんのに気付かなかった俺もヒトのことは言えないよーな気もするが…それはこの際置いといて!

あの店に来た時ゃそーは見えなかったから…そのあとどんだけ飲んだっつんだァ、このヨッパライが!って重ね重ね俺が言えることじゃねーか……。

だけどよォ、胸まで触ってんだからフツーそれで気付きそうなもんじゃね?あと声とか……。

でもまぁ、世の中には平らな胸の女もいるし(ダレとは言わないが)、見かけによらず野太い声で喘ぐ女だってい…るかな?知らねーけどっ。

自慢じゃないけど銀さん、オンナ喘がせた経験はあんまり…ってあるよ!あるっ!もちろんゼロじゃないっ!

でもそー豊富なほうでもな…くもなくもナイっつーか?ホントに自慢じゃねーなコレ…あーもうっ少ない場数で悪かったねっ!

とにかくっ!がっつり顔見て、俺だってわかりゃあ万事解決だろ、こんなんっ。

土方くんは俺に頭を掴まれた体勢のまま、怖いぐらい真剣な顔をしている。

固まってら、コイツ。そりゃそーだよなァ。こんなアホらしい状況、すぐに理解できたら逆にこっちが驚くわ!

銀さんだって気付いた直後にゃ走馬灯巡らせちゃうほどパニクったわけだし?



 * * *



数秒の間。土方は、おそらくは引きつり笑いを浮かべているだろう俺の顔をじっと見つめて……すっと目を細めて、言った。

「わかってる」

だっろー?そんなこったろーと思ったぜ………って……。

はぁっ??今なんとおっしゃいましたぁっっ?

わかってる?わかってるって、何が?ま……さか…ね………ハハッ…。

「ちょっ…、何言ってんっ…待てって!落ち着けっ!…俺だよ俺っ…銀さんだよぅっ………」

土方との距離を保っていた腕が外され、顔が近付いてくる。

咄嗟に顔を背ければ、そのまま耳に寄せられる唇。そして紡がれた言葉……。

「好きだ、銀時……」





第4章.【〜回想…前兆〜side土方】へ進む
 

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