140字とか小ネタとか
□変態交差点
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『変態交差点』
客がないと今日も主はぼやいているが、この家は存外客が多い。
しかしまぁ知らないのも無理はない。彼らは決まって主の留守にやってくるのだから。
うちの主はどういうわけか気配に聡く、どんなに卓越した業をもって潜もうとも在宅中であれば百発百中気付かれて叩き出されてしまう。おまけに大層腕が立つものだから、叩き出される際に加えられるダメージは半端ない。
彼らはそれを嫌というほどわかっているのだ。
そんな主だが身の回りのことにはとことん無頓着だ。どこぞの探偵のように出かける前と室内の物の位置が変わっている、だから侵入者があったはず、なんて考えたりはしない。
もっとも主には雑務専用の式神がいるから自分で片付けた覚えのないものが片付けられていたりゴミ箱が突然空になったりしていても不思議に思わないのだろう。ただ、ゴミではない、まだ使えるはずの物がなくなった時だけはしきりに首を傾げていたが…結局自分の思い違い、と結論づけることが多いようだ。
主は細かいことをいちいち覚えているようなマメなタイプではない。どちらか…と言わずとも、はっきりとその真逆のタイプだ。多少「あれ…?おっかしいなァ?」と思うことがあっても「気のせいだろ」で片付け、やがて忘れる。
だから彼らは、主の留守を狙ってやってくるのだ。
彼らがやることは様々だ。
ある者は常に敷きっぱなしの万年床にダイブし、ゴロゴロと転がって「銀さんのフトン!銀さんのフトン!スーッ、ハーッ!この上で毎晩銀さんはッ……きぃあぁあぁーーーッ!」と奇声を上げ、ある者は無人の便座に腰を下ろして「ぁあ……銀時ッ………」と感極まった様子ではらはらと涙を零す。
ある者は盗聴器を仕掛け(こればっかりはさすがの主もほどなく気付いたようだが)、ある者はゴソゴソと箪笥を漁りピンク色の布に頬ずりして恍惚の表情を浮かべる…。
何が楽しいのかサッパリわからないが、皆一様に非常に心躍らせている様子である。
そして、今日もまた…常連の一人がやってきた…。
* * *
人の留守中に何やってんの?と浴室の排水溝の前でしゃがみ込んでいた男の背に声を掛けると男は一瞬驚いて背を震わせたが直ぐに何事も無かったかの様に立ち上がり向き直って「久しぶりだなァ銀時ィ」とポーズを決めた。
しかしその指先に銀色のチリチリ毛を摘み持っているのを俺が見逃すことは無かった。
とりあえずバカに鉄拳制裁を加えて叩き出し(もちろん例の毛は捨てさせた)脱力してソファに座り込む。
なるほど。これで謎が解けた。
替えた覚えもないのに時々新品になっている歯ブラシ…新八のやつ気が利くじゃねーか、と或る時褒めてやったら知らないと言われたっけ。つまりはアレもあのバカの仕業だったんだろう。
ふと思い付いて、昨晩正体のわからない違和感を感じた枕を検分してみると、カバーの内側から煙管を片手に気取ったポーズで微笑むバカの写真が出てきて、しばし放心状態に陥った。
変態ってナニ考えてっかわかんねぇ…。
――――――――<終>
【補足】
イケメン変態晋ちゃん!(…とその仲間(?)たちwww)
またもや、りでる様がツィッターに流した140字に勝手に続きをつけ、さらに興が乗ってその前の部分も捏造してしまい、なんとなくSSに…っ(^o^;)ゝ
こんなふうに出来ていくお話もあるのね…と。普段救い難く遅筆なワタシはもぉ、感動しきりデス(^∇^)
浴室部分が、発端となったりでる様の手による140字作文になります。りでる様、ありがとうございました!
※ りでる様の了承を得て掲載しております。
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