140字とか小ネタとか
□雪のようで、雪でない…
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『雪のようで、雪でない…』
空から白いものが落ちてきた。とうとう降り出しやがったかと歩を速めようとした時、肩に当たった一片がぎゃっと声を上げた…ような気がした。
何だ…?とバウンドして地面に落ちたソレを摘み上げてみたら何と!それは…小指の爪にも満たないような小さな小さな万事屋だった。
そいつは僅かバツ悪そうにまたなと笑い、ひょいと俺の掌から飛び降りた。視線を巡らすと、ここにもそこにもあそこにも!
ふわふわと落ちてきては接地するやいなや、たちどころに姿を眩ます白いもの全部がヤツだ!どういうことだ?俺は頭がおかしくなっちまったのか?
とにかくもう一度捕まえて確かめようとしゃがみ込んで着地の瞬間を狙ったがどういうわけか捕まえられない。確かに捉えた!と思っても手を開くと空。
「土方くん?何やってんの?地べたに這いつくばって…」
頭上から声が降り、顔を上げると不思議そうな顔をした万事屋が立っていた。
肩越しに見える曇天からは相変わらず白いものが舞い落ちてくる。その一片を目で追うとそれは地面に落ちた瞬間同化するようにして消えた。
ただの…雪だ。
「降ってきたなぁ…なぁ、何かあったかいモンでも食いにいかねぇ?もちろんお前のオゴリで!」
寒そうに肩を竦めて万事屋が言う。
「そうだな……そうするか…」
俺は立ち上がって万事屋の手を握った。奢ってやるさ。いくらでも。お前が…雪みてーに消えちまわねーなら。
一瞬ぎょっとしたような顔を見せたものの、万事屋は手を振り払わなかった。想像に反して万事屋の手は暖かく…その暖かさに安堵する自分に苦笑しつつ歩き出した。
――――――――<終>
【補足】
続きというわけではありませんが、みみこ様の140字が発想の元になっております。
みみこ様、ありがとうございましたー(^^)
※ ツィッターに載せたものに多少の加筆・修正が加えてあります。
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