140字とか小ネタとか

□アヤカシ
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【アヤカシ】


この家を訪れるのは久方ぶりだ。常に施錠されている玄関ではなく裏木戸を潜り母屋へと足を運ぶと濡れ縁に着物姿の見慣れない若い男が純白の足を顕にぶらぶらさせながら座っていた。家の主が日本画家なだけにモデルかなと思い会釈したらば銀髪の男は驚いた顔をして「俺のこと見えるの?」と訊ねて来た。
《Written by こみなみりでる》
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「当たりめぇじゃねえか」土方は訝しげに彼を見た。じゃあ今目の前に見えてるのはなんだって言うんだ、俺の事を不思議そうに見ている赤い瞳。自分を呼ぶ声に一瞬振り向き戻るともう彼の姿がない驚きで息が詰まった、そして出向いた座敷に1枚の古い絵が。そこにはさっきの赤い瞳が描かれていた。
《Written by カフェテリア》
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凝視する俺に「いい絵だろう?」と叔父は言い、自身も目を細めてその絵を見つめた。こと絵に関しては妥協を知らない彼がこんなふうに言うなんて余程気に入っているのだろう。「それで?貴方も彼をモデルに?」「そう出来ればいいが…それは無理だ…」そう答えた彼は何故か遠くを見るような目をしていた。
《Written by 朔夜》
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あれは…どういう意味だったんだろう?俺は仕事に戻るが折角来たんだ、ゆっくりしていくといい。そう言って叔父が仕事場に消えた後も俺はじっと絵を見つめ続けていた。さっき見た男のことが気になって仕方がない。「俺が見えるの?」と不思議そうに訊いた彼。絵と同じ紅い瞳。そして叔父のあの言葉…
《Written by 朔夜》
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ふと浮かんてしまった非現実的な想像を俺は頭を振って追い払った。モデルを断られたのだ。きっとそうに違いない。ならば…もう一度頼んでみよう、と思った。俺は絵に関してはズブの素人で今まで叔父の仕事に口出しをしたことなどない。だけど見てみたい…ような気がしたのだ。叔父が描く彼の絵を。
《Written by 朔夜》
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たびたび叔父の家を訪ねるが銀髪の男には会えていない。本当はそんな男なんていなかったのかもと思いながら庭を歩いていると薄暗い部屋にフワッと白い影が見えた。慌てて部屋を覗くと、あの男がキョトンとして俺を見る。「いたっ!」と思わず声を上げると、男は猫みたいに目を細めて愉快そうに笑った。
《Written by みみこ》
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幾度か瞬きをしても男は消え無かった。「幻じゃあ無かったんだな」安堵と共に独りごちると男はくるりを背を向けた。「ちょおめぇっ」急いで靴を脱ぎ畳の上に足を滑らせ白い手を取る。すると相手はびくりと肩を震わせ「おめぇ…触ることも?」そう言った男の姿は壁に掛けられた鏡に映ってはいなかった。
《Written by こみなみりでる》

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【補足】

こみなみりでる様が書かれた『こみなみは7RTされたら家を舞台に妖怪が登場する伝奇を書きましょう』というお題の140字が元になっております。その続きをワタクシ朔夜、カフェテリア様、みみこ様で書かせていただきました!

リレー作文楽しかったです!お三方、ありがとうございましたー!!!

※ りでる様、カフェテリア様、みみこ様の了承を得て掲載しております。

(そして…ここで終わるはずだったのですが、あまりにこの設定が気に入ってしまい、その更に続きを書かせていただきました。「短編集」に掲げてある『忘れられない恋の話』がそうです。あ、死ネタですのでご注意ください)。

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