From dusk till dawn〜日没から夜明けまで〜

□2.【〜バーにて〜side銀時】
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いちおうケンカの体裁をとってはいるものの、殺伐とした空気の漂わない、言葉遊びみたいな他愛ないやり合いが楽しくて、思った以上に夢中になっていたらしい。

頬を赤らめて土方の傍らに立つ女の存在に気付いたのは、その女が声を発してからだった。

土方も同じだったらしく、僅かバツ悪そうに、完全に俺の方に向いていた体をその女の方に向ける。

ちょっと結野アナ似のかわいー子だ。

「あー…何だ?」

『あの……お隣、いいですか…?』

「ああ。構わねェよ」

そう言って俺と話していた時の位置に体を戻そうとした土方に、そうさせない絶妙なタイミングで話しかけてくる。

『待ち合わせですか?』

「いや違…『わぁっ、そうなんですかぁっ?ステキな人だから絶対カノジョと待ち合わせなんだろうなぁって思ったんですけどォ…よかったぁ、思い切って話しかけてみてっ!あ…でも…今日一緒じゃないだけで、やっぱりカノジョいるんですか……?』

「別に。そーいうのは興味ね…『ホントですかぁっ??えーこんなにカッコイイのにフリーだなんて信じられなぁいっ!あっ!』

それこそ「信じられなぁい」タイミングで、女の飲んでいたグラスが倒れる。

ほとんど口のつけられていなかったカクテルグラスいっぱいの淡いブルーの液体が、土方の着流しを濡らした。

『やだっ、どうしよう私っ……ごめんなさいっ!すぐ拭きますからっ』

「いや、構わ…『ごめんなさい、本当に…私、そそっかしくて……』

「服が濡れただけだ。どーってこたァ…『どうしようっ私…せっかくお話しできたのに……こんなんじゃ嫌われちゃう………』

………「ご職業はお笑いコンビのツッコミ担当ですか?」ってぐらいカンペキなタイミングで、話を打ち切ろうとする土方の言葉を遮りつつ、いそいそとバッグからハンカチを出して濡れた部分を拭き始める。

あー。あー。なんかイライラしてきた。

このオンナぁ、完っ全に最初っからそのつもりだったろ。ったくおモテになることで!

いーよなァ、自分はなぁんにもしなくても向こうから寄って来てくれんだからよォっ。

こんな瞳孔ガン開きのヘタレマヨラーのどこがいーっつーんだか……イヤ確かにカオはそこそこかもしれねェが。

『こんなご迷惑をかけちゃって……お詫びにご馳走させてくださいっ』

「んなに気にするこたァねぇって」

『優しいんですね……でもこのままじゃ申し訳なくって…お願いです!』

「だからその必要はねェって言っ『やっぱり本当は怒ってらっしゃるんですね……それで承知していただけないんですね……』

「違っ…『怒ってないんですか?ホントに……?』

「だからっそう言ってんじゃねーかっ」

『でしたらっ!どうかお願いしますっ!……それとも私……嫌われちゃったのかなぁ……』

「………」

あまりと言えばあまりの三段論法に絶句している土方。

ハンカチを握り締め、ナミダ目で土方を見つめる女………突っぱねたら泣き伏す気満々なオーラを漂わせている。

これでNG出せるヤツじゃねーだろ。男相手にゃ容赦ねーが、女にゃわりと甘ェとこあるし?

甘いっつーよりはどう対処したらいいかわかんねーって感じか。



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