こねこのワルツ
□Chapter.2
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「あー、腹減った」
雄治と聡史は、食堂にいた。食堂では生徒ががやがやと、食事をしたり、次の授業の予習をしたりと、有意義に昼休みを過ごしていた。
「何食おっかなー…うん、今日はカレーうどんって感じだな」
と、雄治は券売機のカレーうどんのボタンを押した。券売機の下にある取り出し口から、カレーうどん、と書かれた正方形の券が出てくる。
Chapter.2 スタートダッシュ
いただきます、と聡史と雄治は、両手を合わせた。
聡史の目の前には、しょうが焼き定食。雄治の目の前には、湯気のたったカレーうどん…と、雨宮愛生。
「いよっ!」
「どわぁッ!?」
湯気の向こうに見える小さな顔に、大げさなくらいに驚く雄治。愛生は雄治の反対側の席で、満面の笑みで雄治を見つめる。
「な…何だよ?」
「カレーうどん…うまそうやなぁ…」
「そ…そうだな…」
「ウチにもくれっ!」
愛生は少し声の調子を上げて言った。がしかし、雄治はそれを聞き入れず、むしろカレーうどんを貪るように食べた。
「あーっ、ケチんぼっ!」
「ごちそーさま」
雄治は、やらんとばかりにあっという間にスープまで完食した。
愛生は頬を膨らませる。
「さとるぅッ!」
「…俺は聡史だ」
今度は聡史に狙いを定めた。
「さとるはウチにくれるよなぁっ!?」
が、聡史は、あっさりと愛生を無視した。
「なんでやねんっ! みんなみんな冷たいなぁっ!」
「自分で買ってくればいいだろう」
聡史は愛生のうるささに少々腹を立てた。
「お前、弁当は?」
ふいに雄治が聞く。
「そんなもんあらへん」
「金は?」
ぐぅー…
愛生が答える代わりに、愛生の胃が答えた。
「…お前…それを一人で食うのか…?」
「せや」
愛生の前にずらりと並ぶのは、さば味噌定食三人前と、牛乳三本。
「ってかお前、ヒトの金なんだから少しは遠慮しろよ!?」
「十分遠慮しとるやないかぁっ!」
「雄治…こいつに常識は伝わらない…しかし、何故こいつに奢った?」
雄治は空になった財布を握り締め、肩を落とした。
「お前、結局アレ全部食ってたけど、腹こわさねえの?」
「大丈夫やで。アレでも物足りんくらいや」
「…よくそんな細っこい体にアレだけの量が入ったな」
放課後。ぱらぱらと人がいる教室で、雄治と愛生はのんびりと過ごしていた。
「ゆーじ、部活ないんか?」
「ああ、バスケ部は、毎週火曜日はないんだよ。…俺はそろそろ帰る」
「せやなぁ、ウチも帰るで」
二人はかばんを手に取り、教室を出た。
「…あ」
「どないした?」
雄治は、教室を出てすぐあった窓の外を見て、立ち止まった。
窓の向こうは、裏庭だった。
愛生も窓の外をのぞく。
「おおおおっ! これはこれは、さとるやないか!」
「”聡史”な」
「あんなところで何しとるん? 誰か待っとるみたいやな」
「ああ…多分アレだな…なあ雨宮…暇だし…ちょっくら見てくか」
雄治は不適に微笑った
「見る見るーっ!」