小説おきば。

□皆が忘れたあの人を…
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皆が忘れたあの人を…

※アルマシュ高校生パラレルです。








あの日、皆の心からマシューが消えた。
なぜ、誰も呼ばないの?
なぜ、誰も知らないの?
彼は死んでなんかいないのに…
どうして彼を忘れようとするの?

ねぇ…――?

***

よく晴れた冬、道路には氷が張っている。俺はアーサーの所に行くためにマシューと寒い外を歩いていた。
「うわっ!滑るなぁ…転んだら危なそ…」
「いぃぃぃっやっほーーー!!」
マシューの言葉を遮り、アルフレッドは氷の上を滑っていく。
「ア…アル!危ないよそんな事したら…っていうかせっかく作ったクッキー粉々になる!!」
マシューは急いでアルフレッドを止めにいった。

俺とマシューは双子の兄弟だ。髪が少し違うくらいで外見で見分けるのは難しいらしい。でも、話せばすぐに分かる。のんびり、小さな声で話をするのがマシューで、自分ではよく分からないけど早口で、大きな声で話すのが俺。
アーサーは昔、『お前達は鏡に映した様に正反対だな』って言ってた。それは我ながら少し思う。
マシューに出来ることは俺は出来なくて、逆にマシューが出来ないことは俺には出来る。
本当に反対だ…
マシューは好き。兄なのに頼りなくて、でも優しくって、料理だって出来る。
それに比べて、アーサーは何も出来ない。喧嘩が少し強い(俺の方が強いケド)くらいで、あとは眉毛くらいしかない。あ…でもビーフシチューは美味しい…かな。
普通に考えて、口うるさいアーサーより優しいマシューの方がいいんだぞ!!そういえば前に家にホームステイで来たアジアのこも言ってたっけ。『あの人、五月蝿いっす。それとクッキングがポイズン混ぜてる様にしか見えない』って。アーサーは料理が下手で恐ろしいものしか作れないから、時々今みたいにマシューと食べ物届けにいくんだぞ。
「アル!!まって…クッキー粉々になるから…」
「いいじゃないか。どうせアーサーにあげるやつだし!粉の方が魔法に使いやすいんじゃないかい?」
アルフレッドはすっごい綺麗な笑顔でマシューに言った。マシューは溜め息をついてアルフレッドの横にならんだ。
「魔法なんかに使わないから…ほらっ!ゆっくりいこう」
そう言ってマシューは俺の手を引っ張った。あったかい…
「まったく…アルはすぐ先に行っちゃうんだから。僕のこと、おいて行かないでよ」
すぐ見失っちゃうから…。そう言ったマシューは少しふてくされた様な顔をしている。
そのあとはたわいもない話。学校のこと、友達のこと、新しく出来た店のこと…
話したいことは尽きない。いつまでだって…。
マシューは笑ってくれる。俺の話を全部聞いてくれる。
いつまでも。
もっと聞いてほしい。
もっと…もっと…―。

もっと

聞いてほしかったのに

マシューはもう動かない
マシューはもう話さない
マシューはもう笑いかけてくれない…
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