灰色の紋章

□第十五章 急成長する若き力
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戦争が終わり、その翌日。



グレイバーラーや魔城は荒れ果て戦争の悲惨さを物語っている。


人間族は多くの者が死に、被害は思ったよりも大きかった。



しかし幸いなことにベガスの六英雄は誰一人欠けず強国の威厳を保った。



そんな中、今回の戦争の終焉をきっかけに動きを見せる者達がいた。





「よし…散れ…!」


オールバックの男が小さな声で言うと、数人の男女がエンプレム帝国の場内へと侵入していく。



「やっぱりな…戦争でダメージを受けたのか見張りが手薄だ」

白い棒を器用に扱うラオサム。

そのまま走っていき階段を上っていく。

「っと…」

ラオサムの前に現れるのは帝国兵数人。


「貴様!何者だ!?」

「ちっ…見つかったか」


ラオサムは白い棒を構え、闘気を強めていく。


「パラダイスウィップ…!」

「バッ!」

棒から放たれた無数の糸のようなものは、鞭のようにしなり帝国兵を弾き飛ばす。

糸を避けた兵たちも、更に放出された糸によりがんじがらめにされ身動きがとれない。


「宝物庫は最上階だったな。急ぐか」








己の筋肉を武器とするヴォルガン。

銃を持ち向かってくる帝国兵など、もはや蚊に等しい。


「うっとうしいな…威力のねぇピストル撃ちまくりやがって」

ヴォルガンは身長195cm、体重100kgを越える鋼のような肉体。

床に落ちているコンクリートの破片を拾い、


「ピッッ!」

親指に弾かれ飛んでいく破片は一人の兵士の頭を貫通し、更に後ろの数人の兵を貫通させた。


「ビンゴッ!!」

滅盗団にとって殺しなど他愛のないお遊び程度。
人間を殺すことに刺激を得ていた。




「さてと…んっ?」

ウォルガンは遥か彼方にいる殺気に気づいた。


「ありゃ確か…なぜやつらがここに……」


ウォルガンは腕を組み立ち尽くす。

遥か目先の男たちを見据えながら…


「やはり…来たか。滅盗団」

「僕の読みは当たってたみたいだね。多分団員みんな揃ってるよ」

「ああ!手玉だぜ!追い詰められたネズミどもめ!」

「ただの筋肉野郎一匹とは歯応えのない任務だな」


四人の奇っ怪な容姿をした男たちが現れる。


「何かと思えばミルナール王国の誇る盾…暴龍どもじゃねぇか。ずいぶんと大物が出てきたもんだな」

ミルナール王国最強の切り札。この四人の他にも二人いる。


登場してきた順にウォルガンには劣るが武術に長けた泰、冷静沈着な黄色い短髪に半袖姿の陰癌、細身の狼のような鋭い牙と目付きをする蒙心、壁を静かに破壊して現れた梟石。


「おい、お前ら。死にたくねぇならとっととお家に帰んな」

野性的な茶色いふさふさした服で軽装のウォルガンは、腕を組ながら言った。


「こいつ、なめてるな。僕たちの強さ知らないらしいね」

陰癌は闘気を強めながら言った。

「自惚れも大概にしとけクズが!筋肉の塊めが……手玉だぜ…!!」


蒙心は軽い身のこなしでウォルガンに迫る。
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