灰色の紋章
□第二章 想いを胸に
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新米冒険者と騎士ラグナートは魔の森を去る準備をしていた。
「そう言えば清涼水はいいの?」
「まだ気づかないとは…清涼水など存在しない。あれはただの水だ」
「なぁーんだ…そうだったんだ」
イリアも清涼水のことは聞かされてなかったらしい。
全てはラグナートが考えた完璧なシナリオであった。
ミルナール王国は少し変わった形で形成されている。
仕事内容がそれぞれ異なる様々なグループに分けられている。
調査隊、親近隊、密偵隊、情報隊…
そしてミルナール王国軍騎士団総隊長…ラグナート…!
武術は軍のトップと言っても過言ではない。
その最高の地位を背負う彼に…まさに今転機が訪れる…
「ザシュッッ…!!!」
「ポトッ…」
ラグナートの肩辺りから赤い何かが噴き出し新米冒険者二人に血の雨が降り出す。
それと同時に木の陰に不気味な黒い姿を確認する。
「「ずいぶんと凝縮された肉体だな…我が力を試すに相応しい」」
その声は聞き取ることのできないほど濁っていて…
計り知れないほどの力が漲っているのを感じ取れた。
「「に、逃げろっ!!」」
「あ、ああ…ああ…」
これが機械獣を使った試練でないことは少年とイリアには瞬時に分かっていた。
しかしやっとの思いで出たラグナートの怒鳴り声は恐怖という感情にかき消されていた。
「「やる気か?人間よ…!!」」
"ぐっ…やらねば…騎士としての恥だろう…!!新たな若き芽を摘むなど我が命を犠牲にしてでもさせん!"
ラグナートは片腕になった状態にも関わらず凄まじい闘志を燃やす。