灰色の紋章
□第四章 隠蔽されし魂胆
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闘技場で手続きを済ませた。
周りには明らかに柄の悪い男たちがこちらを見ている。
「さすが世界一の武術大会だけあってすごそうな人ばかりだな」
「ええ…この中に尊号ってのを持ってる者も少なくなさそうね」
二人が話してるとすぐ隣のベンチから話し声が耳に入ってきた。
「おい…今回もやつが参加するらしいぜ」
「やっぱし今年も参加しやがるのか…[奇面師の死神」カルラ…!」
カルラ…前回大会で残虐の限りを尽くし失格となった異端児である。
「どうやら要注意人物のようだね。失格ってことは対戦相手を殺しちゃったんだろうし」
「そんなやつが参加するなんてどうかしてるわ!」
さすがのイリアの表情にも笑みが消える。
そこに、
「そいつを出場させるってのには何か裏がある」
「あなたは…さっきの!」
声をかけてきたのはガラッドだった。
ガラッドは船で会ったときとは何か違う様子だった。
「何よ…軍とそいつがグルだって言いたいの?」
「いや…恐らく軍は俺たちを利用しようとしてやがる。もちろんカルラってやつもな」
「どういうこと?」
カイツが尋ねるとガラッドは少し考え込み、
「詳しくは話からねぇが…まあとりあえず楽しもうじゃねぇか!」
そう言うとガラッドは再びどこかに消えていった。
ガルエラ軍主催の武術大会…
皆の知らない裏では何かが企てられているのかもしれない。
「皆様よくお集まりくださいました。私はガルエラ軍調査隊総司令官アルクメルです。では今からクジを引いてもらい対戦相手を決めさせていただきますのでそちらの受付にお越しください」
調査隊総司令官アルクメル… わざわざそれほどの者がこの場に現れるのに不信感を抱く者も少なくなかったが皆ぞろぞろと受付まで足を運ぶ。
「調査隊総司令官だって…ラーグと同じくらいの地位だよね…!」
「そうね…ただ者じゃないのは事実よ。それとカイツは一応カイルって名前にしっいて」
「へっ?」
カイツは意味が分からなかったがイリアが強引に手続きを済ませる。
カイツとイリアはクジを引く。
「カイル様はAブロックの4番、イリア様はDブロックの34番ですので名前を呼ばれたらお間違いなくリングの方へお越しください」
カイツは4番…各ブロックのAから順に行うので始まってすぐであった。
イリアは最後の方だ。
しかし二人が別ブロックだったのは幸いだった。
「「カイル様!リングの方までお越しください」」
「もう始まるのか…よーし!じゃあ行ってくるよ」
「気をつけてね!」
カイツはリングへと向かうが、
「おっ!?」
ガラッドとすれ違った。
「ガラッドさん!俺次試合だから行ってくるよ。ガラッドさんと戦えるの楽しみにしてるからね!」
カイツは少し幼げに言った。
「おっとそんな気合い入れてがちがちになることはねぇよ。ちょうどいいタイミングに会ったから言っとくぜ。1、2回戦までは開始の合図が出た直後にただ思い切り…」
「「大変ながらくお待たせいたしました!ただいまを以てガルエラ武術大会を開催させていただきます!Aブロック第一回戦目…ゲルラvs[閃光の虎]カイル!なんとカイル選手は15歳にしてすでに尊号の持ち主!はたしてどのような戦いを見せてくれるのでしょうか!?」」
「くっ…!」
(あのゲルラって人かなり鍛え込まれてる…恐らく俺たちよりは数段経験を積んだ冒険者のはず…!でもやるしかない!)
「まさか初戦の相手がこんなちっぽけなガキとはな。さっさと始めようぜ!」
ゲルラはやる気満々だった。
ちなみに武器は何も持っておらず己の肉体が武器というタイプらしい。
「それでは第一回戦…」
"ただ思い切り…"
「「始めっ!」」
「バッッ!」
開始の合図が鳴ったと同時に一人の男からその場から消えた。
その直後…
"突っ込め…!"
「ズゴッッ!!」
鈍い音がする。
そしてバタッと地面に崩れ落ちる。
ゲルラであった。
「ピーー!!」
終わりの合図が鳴り終えた瞬間に大きな歓声が上がった。
「勝者カイル!」
「「うおおぉーー!」」
たったの一撃でしとめたカイツは何が起きたのか少し戸惑い気味だった。
「相手の動きがスローモーションに見えた…まさかここまで力が付いてたなんて」
自慢のスピードを駆使しての勝利だった。
一回戦は無事終わり控え室に戻る。
「やったわね!この程度ならまだまだ余裕じゃない!」
「うん。思ったよりも優勝は遠くなさそうだ」
カイツのやる気は上昇しイリアのモチベーションも上がる。
とその時!
「「ぐああぁーー!!」」
「…!!」
いきなりの叫び声に体をびくつかせる二人。
「今の悲鳴はただ事じゃない!見に行こう!」
「ええっ…!」