灰色の紋章

□第八章 帝国とのいざこざ
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見事満身創痍になりながらも、違法二ツ星ハンター…アントリー一味との戦いを制したカイツとイリアは、ウールガリ大陸首都のベガスの宿で体を癒していた。


その後二人は依頼の達成の報告をしに、冒険者協会に足を運んだ。



「アントリーを捕らえたですって!?」

「はい。ベガス軍に引き渡したので今は牢獄の中でおとなしくしてると思います」

「そ、そう…」
(あの問題児を追い続けて3年…まさかこんな小さな子達がやってくれるなんて…)

冒険者協会受付人は、何かの決心をしたのか「よし!」と立ち上がる。

「ついてきなさい」

「えっ!?」

「あなたたちをベガス軍六英雄の一人…クレイトスとお話させていただけるよう掛け合ってみるわ」

「「六英雄!?」」

二人は英雄の名に弱く、過剰に反応する。
そして受付人はベガス軍と交渉し、OKが出たと同時にすぐさま場内へと入っていく。

場内は広くきれいとは言えないが、年期の入った剣や盾などが飾られており正面には大階段が存在する。
その大階段を上った先に小さな階段があり、そこから上階に上がっていく仕組みだ。

その階段をひたすら上り10階…
最上階の一角に六英雄の私室がある。

「コンコン…」

静かにドアを二回ノックする。

「どのようなご用件で?」

太く荒々しい声が静かな廊下を響かせた。

「六英雄クレイトス様との談話を予約した協会担当者…ミアルと申します」

「どうぞ」

カチャッ…と鍵が外れた音がし、部屋に入る。

ドアを開けた暗い廊下の脇には、がっしりしたがたいの男が背中で手を組ながら立っていた。

その男の闘気を肌で感じながらも、奥にいるあぐらをかきながら目を瞑っている青年の静かなる覇気をカイツたちはいち早く感じ取った。

空気が弾けているかのような、他全てを圧倒する覇気。

「…!」
(体が…前に進むのを拒否してる…次元が違う)

カイツは威圧感に圧倒されながらも、意を決して声をかけようとした。


「んっ…?」

その前にあぐらをかいていた男は人の気配を察知しこちらを振り向いた。
「おや…君たちは確か…」

張りつめた空気が一気に解放され、暗かった部屋に明かりが灯される。


「あっ!クレイトスさんってもしかしてあなたのことだったんですか!?」

イリアは瞬時に過去を探り、この青年のことを思い出した。

「また会えて嬉しいです。まさかあなたが六英雄なんて思ってもいませんでした」

カイツも思い出したようだ。
「で、今度は僕に何の用だい?」

「それは私から説明させていただきます」

ミアルは深々とお辞儀をしたあと、ソファーに座った。

「実はこの子達にあなたから軍印を調印していただく参りました」

「軍印の調印…君にはその意味が分かっているのかい?」

「はい。この子達を正式にベガス軍と軍協を結んでいただきたいのです」

軍協…
これを結ぶことにより軍との協力関係が約束され、更には情報の交換、特別任務への参加、いつ起こるか分からない戦争への参加が認められる。
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