灰色の紋章
□第十五章 急成長する若き力
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「なに…暴龍が全滅だと…?」
帝国軍6級隊長、ベルゼルクは顔面蒼白。
「役たたずが…高い金払って雇ったってのに……」
ここは六階の廊下。
「滅盗団かと思いきや帝国軍の隊長さんじゃねぇか…!」
この暗い廊下に現れたのはオッズ・ルメーガン。
「冒険者風情が何しに来た?」
「滅盗団が攻めるってタレコミを聞いてな…この機を逃すわけねぇだろ」
オッズの両肩には鉄でできた肩当て。
少しばかりの沈黙の後、オッズはゆっくりと歩み寄る。
「しっかしまあ俺も変わったもんだな」
「あぁ?」
「いや独り言だ、気にすんな」
するとベルゼルクの周囲に鉄が生成される。
それから遠ざかろうとベルゼルクは華麗なバックステップをするが、
「ズガッッ!!」
鉄は勢いよく弾けベルゼルクに直撃する。
「くそが!」
ベルゼルクは辺りを見渡すが誰もいない。
すると背後から何者かの固い腕が伸びてきてがっしりと首を掴まれた。
「前までは隊長クラスにビビりまくってたんだがな…今じゃなんの面白味もねぇ」
「調子に乗るな!」
ベルゼルクは蹴りを繰り出すが、
「ガッ!」
それを軽々と鉄の腕で防ぐオッズ。
「ズガンッッ!!」
オッズは首を掴みながら鉄の拳で殴りベルゼルクは凄まじい衝撃により床をぶち抜き下の階で無惨な姿で倒れる。
「さあ…楽しませてくれんだろうな…帝国さんよ…!!」
カイツ、ガイア、イリアは六英雄クレイトスと共に帝国の城へと侵入していた。
オッズによる大きな音を不審に思いながらも、最上階にいるインゴベルト帝王のもとへと向かう。
「カイツ、迷いはないな?」
クレイトスは周囲を警戒しながら問う。
「ああ…!」
冷静に歩を進めるカイツの瞳が、
極限まで研ぎ澄まされた集中力によりゆっくりと濃く……
深みを増してゆく。
その決意の表情をしたカイツの横顔を見たガイア、イリアも身を引き締め前だけを見据えていた。
「見張り兵か…」
クレイトスが呟くと目の前の階段の上には数人の帝国兵。
「止まれ。侵入者め!」
帝国兵は構えていたショットガンを放つ。
「パパパッッ…!!」
滑らか且つ力強い闘気により、四人は弾丸を弾く。
「さて…ここからは四人で分かれるぞ。少なくとも一人一人が帝国軍隊長とやりあうことになる」
クレイトスは右手をかざしながら言った。
「カチィッ……!」
帝国兵は一瞬にして凍りつき、辺りに冷気が充満する。
「行こう。これで終わりにしよう…何もかも……!」
カイツの記憶の片隅にある帝国軍の愚行…
冷徹で残虐な帝国を潰すのが今回の目的。
四人みんなが違う階を捜索する。
もちろん最上階が怪しいのは百も承知だが、隊長は早めに消した方がいいと言うクレイトスの考え。