灰色の紋章
□第十五章 急成長する若き力
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ガイアは三階の廊下を気配を消し歩みを進める。
「侵入者ですか…今日はよく侵入を許しますが見張り兵は何をしているんですかね…」
エリート部隊である第三級隊長ウルフェリア。
滅盗団のアルガムルを追い詰めたほどの実力を持つ。
「さてと…始めるとするか…」
ガイアは笑みを浮かべ、右手のひらに紫色の闘気の玉を作り出す。
「名もない冒険者がなぜ帝国に恨みを?」
「恨み…か…あるとしたら帝国なんかよりもベガスにだな。だけどな…友の恨みは俺の恨みでもあるんだよ…!」
「たかが友のために死にに来たというのですか…まあ、死にたがりの子供は死なせてあげるのが道理」
ウルフェリアは素早い踏み込みでガイアに迫る。
ガイアは玉をウルフェリア目掛けて投げつけた。
「バッ!」
ウルフェリアは何もない空間で拳を突き出す。
すると玉は何かの衝撃により消し飛んだ。
「能力使いやがったか…おもしれー…!」
ガイアはみなぎる闘気を強めていく。
「いくぜ…!!」
ガイアもウルフェリアに負けない踏み込みで迫り拳を突き出す。
両者の拳は激突するが、ガイアの拳はやがてミシミシと音をたてていく。
「ゴオッッ!!」
ガイアの拳は何かの衝撃により弾かれ隙が出る。
「油断しましたねっ!」
ウルフェリアは隙を見逃さず、さらに踏み込み懐に潜る。
「ドゴオッッ!!!」
凄まじい衝撃。
「ミシミシ……ズゴッッ!!」
更に畳み掛けるように同じ箇所に衝撃。
ガイアは吐血し倒れる。
「さすがに…3級隊長ともなると強ぇな…」
ガイアは想像以上の衝撃をくらい苦しみながら立ち上がった。
「手薄な我が帝国を攻めに来たのは分かりますが…我が国の軍事力を見謝りましたね」
ウルフェリアはずれた眼鏡を直す。
「あなたも…あなたたちの仲間も全員死にます。いくら手薄であろうと主力を誇る隊長、そして帝王護衛の闇の使者がいる限り帝国は滅びはしません」
「大した自信だな…やれるもんならやってみろや…!!」
ガイアは体に闘気をまとわせる。
その闘気は変化し岩のようなゴツゴツとした質に変わっていく。
「これが…偉大な大地の力だ…!!」
ガイアは岩に纏われた姿でウルフェリアに迫る。
「所詮岩…砕くことなど造作もありません」
「これでもか…?」
纏われた岩は赤くなっていきマグマのような熱を持ち始める。
そして拳は直径3mはあろう大きさになり、ウルフェリアを襲う。
「これは…まずい…!」
辺りの窓を溶かしながら迫る巨大な拳を回避しようとする。
「逃げ場なんざねぇよ…!!」
ガイアの拳はさらに巨大化し、廊下の幅とほぼ一緒になる。
「なっ…バカなぁ!」
「ズッッゴーーーンッッ!!!」
廊下は炎に包まれ、そこに燃えながら荒い息をさせるウルフェリアがいた。
「こう…なること…は計算済み……ふははっ…闇の使者と…ロゼ・バリラフェルが存在する…限り………」
「お前らに…勝ち目は…な……い…!!」
ウルフェリアの荒い呼吸は静かに止まる。
その姿をガイアは切なさを含む目で見届けた。