灰色の紋章
□第十五章 急成長する若き力
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その頃、ギアーは大階段を上り屋上を目指していた。
隣には手を組んだのか、イブロフとサンチェの姿。
「まさか異端児と言われてるあんたと手を組むとはな…」
イブロフは丸いニット帽で黄色い刀を腰に下げている。
「頼むからトラブルはごめんやで。あんた何するか分からんからなっ」
サンチェはバナナを食べながら言った。
「心配すんな。あん時はあん時…今は今…あん時の騒ぎはああするしかなかったわけだ」
「ちっ…意味分からんやつだ」
イブロフは大階段の先の小さな階段を先陣きって上る。
「待て!罠や!!」
サンチェが声をあげた。
すると階段の先から矢が放たれた。
それを三人は華麗に避けるとよーく目を凝らす。
「今話題のルーキー三人か…がははははっ!!よく来たなぁ!」
身長は2m以上、かなりの巨漢で髭を生やしている。
「なんだこいつ…」
「帝国にこんなやついたか?」
「ああ、そう思うのも無理はねぇ。ここに仕えたのは最近だからなぁ!少し力を見せただけで王の使者という地位となれたもんだ!」
「…!」
(こいつ…なんなんだ?底が見えないし…何者なのか全く分からん…!)
策略家のイブロフは冷や汗を流す。
「なんや…ずいぶんと偉そうやな。なめとるんか?」
サンチェは巨漢の男に近寄るが、
「やめろ!サンチェ!!」
「ニヤリッ…黒流!!」
巨漢の男、ブリリアント・バーティは手のひらを地面につけた。
すると闇の闘気が激流のように流れ、サンチェを飲み込む。
「あつっ…なんやこれ……」
サンチェの体には闇の闘気が蝕み、体のあちこちに痛みが生じる。
「うっとおしいわな…」
「黒気を甘く見ねぇことだな。やがててめぇの体を蝕みその損傷は体内へと及ぶ!」
サンチェの体はビリビリと弾け痛みはかなりのものだ。
サンチェは一旦イブロフのもとへと戻る。
「大丈夫か?」
「正直これには触れん方が得策だわな…体おかしなりそうやわ……」
サンチェの額には冷や汗。
「なにこそこそしてんだ?かかってこいよっ!!」
バーティは両手を広げた。
「さっ!」
イブロフは素早い動きでバーティに斬りかかった。
離れた場所から斬撃を繰り出す。
「黒壁!!」
バーティは闇の闘気の壁で防ぐ。
その壁はやがて流れるように変形しイブロフたちに迫る。
「ちっ!」
三人はそれを避けるが、
「がははぁ!!」
「バキッっ!!」
鈍く嫌な音が響き渡る。 イブロフは首を叩かれ地面に倒れ込む。
「くっ…」
(なんて力だ…首が…)
イブロフは痛む首をこらえながらも立ち上がる。
隙を見てギアーはバーティの背後から斬りかかる。
「甘ぇなぁ!!」
「ズガッッ!」
ギアーは横腹を殴られ吹き飛んだ。
「こいつ…ただの自惚れた雑魚じゃねぇ…こ、こんな打撃何発も受けきれねぇぞ…!」
ギアーは立ち上がり再び斬りかかる。
「無駄だぁ!!黒壁!!」
急遽再び目の前に現れた壁にギアーは激突する。
「しまっ……」
壁は瞬時に形を変えギアーを飲み込む。
が…
「助かったぜ…わりぃな」
「へへっ…気にせんといて…」
黒い闘気に蝕まれているサンチェだった。