灰色の紋章
□第十六章 崩壊獣の正体
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現実は受け入れられないことばかりだ。
そう思うカイツだが、ラグナートは闘気を強めていく。
近寄るな!と言わんばかりの威圧感に圧倒される。
「そんな…」
「使命の期限は知っているな?今日なんだろう?」
スレイブは軍に体をいじられ、使命を果たせなかった場合は遠隔操作により爆発され木っ端微塵にされる。
その使命の期限が今日までだという。
「ああ…だからやり残すことがないように帝国を倒しに来たんだ…!」
「そうか…なら…今こそ使命を果たしてみせろ!!」
場の緊張感は高まっていく。
「俺を…越えるんだ。お前ならやれる」
そう言ったラグナートだが構えるのをやめ、遥か後方を向く。
「人間どもめ…殺す…!!」
相手にされていなかったハジャは怒りを露にし向かってきた。
「いいか…よく見ておけ。これが…ウァレンシア最強の力だ…!!」
「ガシッ!」
ラグナートは向かってきたハジャの拳を手のひらで掴む。
「グシャリッッ!!」
「グガァー!!?」
ラグナートは掴んでいたハジャの拳を握力だけで握りつぶし、拳はまるでぼろ雑巾のように骨が飛び出しぐちゃぐちゃになる。
そこに、
「はっ!!」
「ズガァッッッ!!!」
見えないほど速い正拳突きによりハジャの腹部は貫通され鮮血が舞う。
「…やっぱり…すごい…!!」
カイツはゾクゾクするような感覚に襲われていた。
「まだ闘る決心はつかないか?」
「ラーグ…俺は…昔の俺とは違う…!!もう三年も経ったんだ」
「ふっ…!」
(見違えたぞ…カイツ!)
「それに…前にもこんな経験があった」
カイツは闇武術大会の時のガラッドを思い出す。
そして、カイツの体にムグロを倒したとき以上の闘気が宿っていく。
その刹那、カイツは動いていた。
抜き足により一気にラグナートに迫る。
「純金盾!」
「ドゴォッッ!!」
ラグナートは肩の鎧でカイツの拳を防ぐが、あまりの衝撃に少し後退する。
「俺に力で挑むとは…いいだろう…!」
ラグナートは肩当てでの防御の体勢をやめた。
すると巨体には似合わぬスピードでカイツに迫る。
そしてラグナートの拳がカイツを襲うが、それをすれすれで避ける。
「ドゴォッッ!!」
「ぐはっ!」
ラグナートの逆腕の拳がカイツの顔面を破壊する。
「はぁ…はぁ……」
「ドク……」
カイツの鼻からは血が溢れ始める。
その破壊力にただ立ち尽くすしかできなかった。
「何をぼーっとしてる?」
気づいたらラグナートは目の前にまで迫っていた。
「ズガッ!!」
顎を蹴りあげられ宙に舞うカイツ。
うまく体勢を立て直すが、そこには既に攻撃を仕掛けるラグナートの姿。
されるがままにカイツは蹴り飛ばされ地面に叩きつけられた。