灰色の紋章
□第十六章 崩壊獣の正体
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「さて…これで正々堂々一対一となったわけだが…」
メルガンが言うが、
「そうとも限らんみたいだぞ?」
メルガンは視線を後ろに移す。
紅蓮がゆっくりと立ち上がった。
「二対一か…いいだろう…むしろ好都合ッ…!!」
メルガンの瞳が紫色に光りだし大地が微かに揺れ始める。
「この揺れは…やつが起こしていると言うのか…?ばかな…!」
臨戦態勢を保ちつつも動揺を隠せないラオサム。
「ふっ…久々に血が騒ぐわい…!!」
ゼイラルも臨戦態勢。
緊張感ではち切れそうなこの戦場は異様な空気が漂っていた。
最初に動いたのは百戦錬磨ゼイラル。
ゼイラルの動きは実に静かで音もなくメルガンに迫っていく。
「わしの拳…触らん方がいいぞ?」
「くだらん…避けるに値せん」
ゼイラルの拳がメルガンのガードした腕を強打する。
するとメルガンは体の異変に気づく。
「な…なん…だ?」
メルガンは何が起きたのか理解できず、尻餅をついた。
「ほうほう…化け物にも効くんだな。こりゃいい実験になったわい」
メルガンは未だに立ち上がることができず、バランスが安定しないかのようによろよろとしている。
立とうとするがまったく立てずに尻餅をつく。
「どうだ?目の前がゆらゆらするだろ?」
ゼイラルはそう言い足に闘気を集中させた。
「噂には聞いていたが…あれが毒拳。闘気を毒に…いや、麻痺性のある猛毒に変え拳に纏うという。恐ろしい技この上ない…!」
紅蓮は噂を頼りにゼイラルの技を見抜いた。
「ズゴォッッ!!!」
ゼイラルの鉄の硬度を誇る蹴りがメルガンの顎を明確に打ち抜いた。
その勢いにより吹き飛ぶ。
「やはり…毒だったか。道理で体が動かんわけだ」
メルガンの口からは血が垂れ吐血した。
「ほう…もう動けんのか。常人なら死、達人でも数時間は身動きできん毒なんだがな」
それほどの強力な毒が軽減されている。
その理由…
「簡単なこと。以前にこれ以上の毒を体験しているだけのこと…!」
メルガンの体は毒に対して抗体を持っている。
つまり…
「あんたの動きを止められるのはせいぜい数秒ってことか」
ゼイラルの考えは当たっていた。
「猫かぶりが。数秒止められればお前にとっては十分なはず」
メルガンは闘気を強めて構える。
「それはそうなんだが…そう簡単に喰らってはくれなさそうだがのう…!!」
ゼイラルも構える。
もはや紅蓮がつけ入る隙などなかった。
そして、ラオサムやキマリザさえも戦いに集中できずにいた。
「ズバッッ!!!」
メルガン、ゼイラル両者同時に飛び出した。
「ゴォッッー!!」
互いの拳が激突する。
両者の拳の間には落ちていた金属片が挟まっていた。
ゼイラルの毒拳は金属片に阻まれる。
「ぬ…な、体が…」
メルガンは毒に触れていないにも関わらず体制を崩し足元が定まらない。
「ぐ…ま、待て…なぜだ…?」
それを見ていたゼイラルは表情を変えた。
「ほっほっ…体が動かんから治るまで待ってくださいってか?」
「ほざけ!ひよっこがッッ!!」
ゼイラルの顔の血管が一気に浮かび上がった。
鬼の形相を見せるゼイラルの右膝にはち切れんパワーが纏われる。
「「ズゴォッッ!!!」」
ゼイラルの膝蹴りがメルガンの顔面に食い込み凄まじい爆音が鳴り響いた。
メルガンは叫ぶ暇もなく吹き飛び城の壁に激突した。
「くっ…もはや次元が違うってか。」