灰色の紋章

□第七章 成長した志
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その人影は、開けた場所で水を飲み休憩してるようだった。

「あのー…」

「んっ?子供がこんな危ない森で何してるんだ?」

「ははっ…これでも僕たち冒険者なんです」

「ほう。そいつは立派なものだ。ところで何しにこの森へ?」

男は二十代後半だろうか。
軽装で細身である。

「実はある依頼でこの森に殺傷事件の主犯がいるらしくて…何か知りませんか!?」

イリアが答えた。

「さあ…俺が見たのは冒険者っぽい三人組だけだが…あの三人は冒険者のバッジをつけてたから恐らく白だな」

「いや…それがその犯罪者は元冒険者なんです」

「ってことはまさか…」

「多分その三人組が犯人」
「どこら辺で見たか分かりますか!?」

カイツが男に聞いた。

「ああ。こっちだ!」

男は走り出した。
それを二人は追う。





「ドガッッッ!!」

「うっ…!」

イリアは前方から現れた金髪の男に殴られ木に叩きつけられた。

そこに走っていた二十代後半と思われる男が、軽い身のこなしでカイツに振り返り蹴りを繰り出す。

それを避けられずまともにくらい後退するカイツ。


「ぐっ…だましたのか!」

「ちょろいもんだな。ガキの察知力はこんなもんだろ」

そういうと背後からまた一人現れた。
完全に殺傷事件の主犯…アントリーとその仲間である。

「お前ら…何しにここへ?」

アントリーも先程の男同様細身で、眼鏡をかけ顔は細く骨格がはっきりしている。
「お前がアントリーか!何で人を殺すんだ…!」

怒りの混じったカイツの言葉。
しかしそれに全く臆することなくアントリーは一歩前に出る。

「俺たちも無意味に人を殺してるわけじゃない。ただの殺人鬼だと勘違いはしないでほしい」

「何が欲しいんだ!お前らのやってることはただの無情な殺人鬼とどう違うんだ!」

カイツは闘気を体に纏い威嚇する。
しかしやはりアントリーは全く警戒すらしていないのか淡々と言葉を発する。

「はははっ!新米のガキが随分と勇ましいな。俺がほしいのは空想の遺物…とでも言っておこうか」

アントリーはずれた眼鏡を直し、回りくどい言い方をした。

「それともお前らもこのゲームに参加するか?」

「ゲームだと!?」

カイツは人殺しをゲームだと言うアントリーを許せなかった。

「そうさ…遺物争奪戦とでも名付けておこう」

「いい加減にしろーっ!」

カイツはアントリーに向かって押さえかかる。

「空想の遺物を知らんやつらに用はない」

アントリーは向かってきたカイツを手の甲で軽々と弾く。

「くっ…」
(隙が…全くない…!!)

カイツは体勢を立て直し再び得意のスピードでアントリーに突っ込む。

「まあ待て」

「…っ!?」

あまりにも冷静な言い方に気が抜けてしまったのか、カイツはその場に立ち止まる。
アントリーとの距離は約3m。

「言ったはずだ。これは単なるゲームにすぎない。遺物の所在を知らん者同士が争うほど無意味な行為はないだろう」

「勝手なこと言うな!俺は殺しのゲームなんかに参加しない!」

「殺しのゲームか…勘違いしてもらっては困るが殺すか殺さないかは自分次第。正当な宝探しみたいなものだ」

カイツはその言葉に怒り、抜き足を行うが…


「バシッッ!!」

「ぬっ!?」

気の影から現れた人影にアントリーは顔面を蹴られ地面に尻をつく。

「炎網っ!!」

「ボワアァッッ!!」

森は瞬く間に燃え広がっていく。

「行くわよ」

イリアは無表情のままカイツの腕を引っ張った。
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