灰色の紋章
□第七章 成長した志
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こうして二人はベテラン冒険者の指導を経て、再びアントリーを探しに森をひた歩く。
時間は午前9時…
まだ上りきらない太陽の日が、木々の隙間から差し込んでいた。
「アントリーは他の冒険者を立て続けに襲うはずだ。大きな音がしたらそこにいる確率は高いと思う」
「でも数日前に会ったきり鉢合わせにならないとなると森を出たかもしれないわ」
「この森は冒険者の通り道になってるんだ。だから多分やつらはこの森からは離れないはず」
「冒険者を殺してまでほしいもの…あたしたちには考えもつかないわね」
アントリーの言っていた不可解な言葉[空想の遺物]。
カイツには少しばかりだが心当たりがあった。
すると広大な森は異様な風に吹かれ、さわさわと葉の揺れる音が響く。
その異様さを感じ取った二人は辺りを見渡す。
しかし人の気配は全くなかった。
「何か…いるぞ…!」
カイツはふと何かの殺気を察知する。
「オオォォーー…!」
風が何かを叫んでいるような不気味な雰囲気を辺りが覆った。
「ブオオォーーッ!!!」
突如突風が襲いかかり二人は耐えられず吹き飛ぶ。
「ズガッッ!!!」
カイツは吹き飛んだ勢いによって何者かに蹴られ木に激突する。
イリアはその蹴った人物を見て構える。
もちろんと言うべきか…
見慣れた顔の痩せた男は、後ろに二人の男を率いてカイツとイリアの前に立ち塞がる。
「くっ…!」
カイツは口から出た血を拭い、ゆっくり立ち上がり虎のような目で男を睨む。
「まさかお前たちから仕掛けてくるとは…俺たちに用はもうないはずだ」
カイツは痩せた眼鏡をかけた男、アントリーに言った。
「確かにお前らはハズレだ。ただ妙な噂を聞いてな…ガキ二人が尊号を掲げベガスを拠点にしてると」
「だから何よ。あなたはただ冒険者が憎いだけなの?」
「俺が言いたいのはそこじゃない。尊号とはたかが数年この世に尽くした半端者が手に入れられるものではない…!!」
アントリーから初めて威嚇するような殺気が放たれた。
その殺気を肌で感じ、二ツ星という地位の違いを感じさせられたカイツとイリア。
冷や汗をかきアントリーの[強さ]を目の当たりにしながらも、勝算のあるカイツは一歩前に出る。
「こうしよう…俺たちが求めている遺物…心当たりくらいならあるだろう?その情報を話せばこの場は一旦引こう。どうだ?」
(空想の遺物…多分あれだ…分かるけど…やつらの悪事を見過ごすわけにはいかない)
戦わず穏便に済めば一番いい。
しかしカイツは心の中で迷っていた。