灰色の紋章
□第七章 成長した志
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カイツはふとアントリーの背後に目をやると一人消えていた。
舞う木の葉と同時に男が空から襲いかかってきた。
「はあぁっ!」
男は竜巻を産み出しカイツに向けて放つ。
しかしカイツはその竜巻の中に無理矢理入り込み、気づいたときにはすでに竜巻を貫通し抜けていた。
「「ギッッッ!!」」
「うおっ…!?」
竜巻を放った男はいきなり数メートル弾かれ地面に着地する。
「ぐっ…何しやがったあのガキ…!」
「闘気を放出しただけだ。スワトロ。少なくともお前で手におえる相手じゃない。女のガキはお前らの好きなようにしろ」
「「了解…!」」
「行くぜ!ラウザ!」
ラウザとスワトロは瞬時に地を蹴り凄まじいスピードでイリアに迫る。
イリアはカイツと一度目を合わせ、深い森の中に駆けていった。
「かっはっはっ!どこまで持つかな?おちびちゃんっ!」
ラウザは笑い声をあげ、イリアを追う。
数分走った後、イリアは急に止まる。
「ふぅっ…やっと諦めてくれたか」
「スッッ…!」
「へっ…?」
ラウザの視界からイリアが静かに消える。
「バシッッ!!」
イリアの蹴りがラウザの左顔を捉え倒れはしなかったが後退する。
「油断しすぎだ。ラウザ!あの子さっきのガキほどじゃねぇがなかなかのものだ…!」
「ちっ…おかげで目が覚めたぜ」
ラウザとスワトロはイリアに近寄り、戦闘体勢をとる。
「女の子一人に二人がかりか?」
「ズワッッ!」
「なっ!?」
スワトロは真後ろからの蹴りを間一髪避ける。
「えっ!ワイトさん!?何で…」
スワトロが避けたため、背後にあった木は静かに砕けた。
「お前の相手は俺だ…!!」
「…!」
(こいつは…強いな…!)
すらっと伸びた長い足、そして長い鎌を手に異様な闘気を身に纏う。
そしてイリアはラウザを誘おうと、両掌を合わせる。
するとラウザの足元から炎が噴出し、ラウザは間一髪それを避けた。
「ちっ!てめぇ…!」
その間にイリアは更に森を駆け抜けていった。
「ふっ…なぜそこまでタイマンに拘るのかは分からないが…ラウザをあんなガキ一人に任せていいのか?」
「問題ないさ。なんせこの俺が鍛えた子だ。誤算はあんたらの方さ」
スワトロは体に風を纏う。
そしてワイトのただならぬ気迫を感じとり構えた。
ワイトは小さく「誤算ってのは…」と呟き、
"俺がこの場にいる…!!"
「…!」
「ゴッッ!!」
ワイトの軽快なステップにより繰り出されたストレートの拳はスワトロの顔を力強く押し潰す。
その勢いに倒れ尻餅をつきあまりのダメージに完全に冷静さを失っていた。
そこに間髪いれずワイトの回し蹴りが飛び出し、スワトロは地面に四つん這いになる。
「あがあっ…くそっ!」
スワトロはやけになり体に包んでいた風をワイト目掛けて放出した。
「突風…か」
ワイトは再び異様な気迫を誇る闘気を纏い、それが蒸気のように立ち上っていた。
ワイトは木々をなぎ倒す突風の中を、よろける素振りもなく堂々と歩いて見せた。
「なっ!あんた…バケモンか…!?」
「こんなもんが何になる?男はやっぱり拳だろ…!!」
そう言うとワイトは一瞬でスワトロの懐に潜り込んだ。
「ズゴッッッ!!!」
鈍い音と共にスワトロの体が九の字に曲がった。
その衝撃はすさまじく、何本かの骨をなんの躊躇いもなく砕いた。