灰色の紋章

□第九章 新たな勢力
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(あの甲羅の強度は恐らく鉄に近い…それを素手で潰すとは…あの子は感情によって莫大なパワーが発揮されるタイプか。末恐ろしい子だ…!)

クレイトスはカイツに下がるように促した。
それに反応し他の冒険者も下がり、クレイトスは魔族の集団の前に立つ。



「これ以上の争いはしたくない。お前たちのボスと話がしたい。あんたらを束ねて服従させてる者がいるんだろう?」

「それは無理だな!王は気高き神聖なお方だ。このウァレンシアの汚い空気を嫌い今は確実に隔離された場所におられる!」

「なら…仕方ないな」



クレイトスはゆっくりと空気を吸い込むと、


「はああぁぁぁーーー!!」

それを思いきり吐き出し、白い霧が吹き付ける。



「「カチッッッッッ!!」」



なんとクレイトスの真っ正面一帯は一瞬にして凍りついた。

「ガッッ!」

「「バリィッッッッ!!!」」

クレイトスは開いた手のひらを前に出し握った直後凍りついた魔族たちは一斉に砕け弾けた。


「さて…行くか」

クレイトスの図抜けた力を見た冒険者たちは言葉を失っていた。

その数分後、地面にぽっかりと空いた穴を発見した。
その穴は深く続いており、メンバーを二つに分け建造物を目指すグループと洞穴を散策するグループに分けられた。

洞穴組は15人、建造物組は実力ある者のみにし、クレイトス、カイツ、イリア含め6人。

建造物組は地上をどんどん進んでいき、途中強い殺気にクレイトスは気づいた。

「なんであたしたちをこっちのグループにしたの!?」


この微かではあるが獣の殺気の中イリアが聞いてきた。

「潜在能力…外面の強さより内に秘めた可能性に懸けようと思ったのさ」

「英雄様に認められて嬉しいわ」

イリアは手を口に当てて笑った。

「それより…誰かいやがるぜ…!!」

ガイスターは前方にいる獣らしき者を警戒する。

「なんだここは…!?」

カイツが見た光景は人間がところどころの木のとげに人間が突き刺さっているものだった。


「すらっ…!」

そこに木の影から、体型は細身で顔は縫った痕があり、豹に似た鋭い目の魔族が現れた。
腕を広げると脇からはヒラヒラした小さな羽らしきものがついていた。

「お前らここに何しに来た?人間が踏み入れるべきところじゃねぇのは分かってるはずだが…!」

豹のような魔族…マイラは大きく長い腕を組ながら言った。

「分かっているさ。ただあんたらに伝えたいことがあり危険を承知で来た」

「で…言いたいことってのは何だ?」

「今我が国は帝国という国と一触即発の状態にある。是非あんたたちと手を組み帝国の非道を止めたいのだが…」

「手を組み?笑わせるなよ!気色悪い人間と協力なんざどの魔族も恐らくしねぇな」

「やはり…無駄な交渉だったか」

クレイトスは戦闘体制に入ると思いきや、闘気を消し後ろに下がった。

「カイツ、イリア。あの魔族…お前ら二人で倒せ」

「えっ!」

「あたしたちで…?」

二人は少しばかりの動揺を見せた。

「あれは恐らく実在する建築物…王城に居座る王直々の部下だろう。一隊を担った幹部クラスの実力者ってところだな。あの程度を倒せないなら足手まといだ」

二人は動揺を一切消し、カイツはクレイトスの前に歩み出る。



「俺は…ラーグさんに会いに行くんだ…」



「「邪魔者扱いするな…!!」」



「ふっ…!」
(やはり…俺が見込んだ子達だな…!



"先手必勝!"


「バッ!!」

カイツは勢いよく飛び出した。

しかしカイツはマイラの左腕で弾かれる。

「痛っ!くっ…!」

カイツの鼻からは血がゆっくりと垂れる。

「ファイアボール!」

イリアの炎はマイラの左腕にかき消され更に蹴りをくらい大木に叩きつけられた。

「うっ…」
(速いし全く隙がない!つ、強い…!)

イリアは強打した腰を擦りながら立ち上がった。




"なら…見せてやる!!"


カイツは身体中をめぐる闘気を全て右拳にうつした。

「ジュワアアァーーーッ!!」

桁外れなパワーが、少年の拳に集まる。

「はあっ!!」

闘気が凄まじい勢いで放出された。

「ズオッッ!!」

「ぬっ!なんだ!?」

その放出された闘気はマイラの横腹をミシミシと押し潰す。
苦痛の表情を浮かべたマイラだったが、すぐさま地面の異変に気づく。


「ファイアジェット!!」

「ぐあぁっ!!」

マイラは地面から吹き出された炎に焼かれる。

「うざってぇ!!」

「バッッッ!!」

マイラは力ずくで炎をかき消し、二人に迫る。

「ファイアウォール!!」

マイラの目の前に炎の壁が現れるが、

「こんなもん…」

その炎を気にせず突っ込んでいったが、

「「ズワアァッッッ…!!」」

炎を抜けた先には先程見せた桁外れなパワーを右拳に込めたカイツがいた。


「せーのっ…」










「ズガアァッッッ!!!」

「ぐはぁっ!!ぐおっ…」

放出ではなく右拳を直にくらったマイラの体は九の字に曲がる。


「ま、まずい…!!」

マイラは危機を察し、両腕を大きく広げ大空を飛び去っていった。



「「クソがあ!!てめぇら覚えてろっ!!いつかズダズタに食い殺してやるっ!!!」」



「ゾクッッッ……!!」










「はあはあ…全力を込めたのに…倒せなかった…!」
威力半減の放出でさえ、アントリーをねじ伏せたパワーにも関わらず、カイツの必殺技は魔族に通用しなかった。


「あたしの炎もほとんど無傷、それにカイツの力でも倒せないなんて…」
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