灰色の紋章

□第九章 新たな勢力
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その動き…

いや…

動いてさえいないように見えるのだ。
端から見ればまさに棒立ち状態。

「俺が極めたのは限りなくスムーズな体の動き、敵の拳を防ぎ且つ一瞬にして攻撃にも転じる」

カイツは額から汗を流しながらも、その場で構える。

「くらえっ…!」


カイツは闘気を放出しようとしたが、

「遅いな」

「ズガッッ!!!」

カイツはまたもやぴくりとも動かないロゼに弾き飛ばされた。

「当然素早く闘気を放出することも可能」


(隙がない…放出系も全く通じない。こうなったら…)





"攻めまくれ!"



「スバァッッ!!!」


大地が裂け、カイツは弾丸のように飛んでいった。
痣が浮き出て正気を失い溢れんばかりの力でロゼに蹴りを繰り出す。

それはやはり軽々と防がれ、見えない拳に弾き飛ばされる。

「うっ…く…!」

カイツは立ち上がるが、足元が定まらない。

素早く且つ力強い拳を数発受けたカイツの顔は大きく腫れていた。

「もう…これしかない…!」

カイツは再び構える。

「バシッッ!!」

カイツは闘気の放出を受け吹き飛ぶ。
しかしそれを気にせず更に立ち上がり構える。

「無駄だ」

「ズガッッ!!」

地を這うように凄まじいスピードでロゼが接近し、カイツの腹部を思いきり上空に殴り飛ばした。

地面に落下したカイツは膨れ上がった顔面。
しかしめげずに立ち上がった。

「俺は…お前ら帝国を許さない!この戦争を…終わらせなきゃいけないんだ!!」

「実力もなしにか?無謀だろう」

「それでも誰かがやらなきゃいけないんだっ!!」



「「ジュワアアァーッッ!!!」」




カイツの右腕は溢れんばかりのパワーが凝縮されていた。


「いいだろう。受けてたとう」

ロゼはカイツの全パワーが右腕に凝縮したものを真っ正面から受けるべく、体に鋼のごとく闘気を纏った。


「はああぁーーっっ!!」




"ここで死んだら…ガラッドに会えない"


"ここで死んだら…イリアは何て言うかな?"



"こんなところで…死ねないっ!!!"






「「ズオオォーーーンッッ!!!」」



地響きが鳴り砂が舞う。 強大な力がぶつかり合い二人の姿は舞う砂により見えない。

ただ分かるのは…


ロゼの荒い息づかい。
そしてやがて見えてくる光景は…





全てをぶつけたカイツの倒れた姿。

「何ていう子供だ…こいつは…ウァレンシアを動かすほどの力を隠し持っている…!!」

ロゼは痛む腕を擦りながら地べたに腰を下ろした。

「帝国がこの戦争のきっかけを作った話は本当なのか…なら今俺がやっていることは間違っているのか?」

ロゼは先程カイツには、帝国がこの戦争を仕組んだということを否定しなかったが、その事を知らなかった。
ただ戦争の事の顛末を見に来る指令を受けベガスに来ただけであった。


一級兵隊長ロゼ…
帝国の愚行に口を挟むことなく任務に勤しんでいたが、ここに来て自分たちのやってきたことに疑問を持ち始めていた。
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