人間、あせると馬鹿なことを考えるらしい。このときの僕がまさにそうだった。

幻術ではない→じゃあ夢だ!

冷静になっって振り返ってみれば、馬鹿にして笑ってしまえるような公式がこのときの僕には成り立っていた。
早合点した僕は、真顔で壁に向かって頭突きをかました。

「っ痛・・・」

・・・夢でもないらしい。
というかさっき沢田綱吉にぶつけた額がすごく痛い。
今、確認する必要なかったんじゃ・・・とか思った奴、表へ出ろ。

「石頭め・・・」 

そう悪態をついていた僕に、いつの間にきたのか沢田綱吉が僕の肩を支えた。本当に気配がない。

「誰が?・・・っていうかさっき壁に自分で激突してなかった?起こしたときといい、なんか骸おかしくない?」
「・・・」

無言で沢田綱吉を見ていると、彼はあからさまに顔を赤らめて慌てはじめた。
なんだこの、付き合ったばかりの恋人の様な反応は。

「あっごめん!別におかしくないよな、骸は!おかしいの俺かもしんない!はは・・・って!ご飯冷めるじゃん、せっかく作ったのに!リビング行こう、骸!」
「はぁ」

いきなりまくし立てあげられて思わずほうけていると、沢田綱吉が僕の手を引っ張った。どうやらリビングに連れて行くらしい。ずいぶんおしゃべりで積極的な沢田綱吉がいたものだ。されるがままにしていると、目的の場所に着いたようで、彼は立ち止まった。促されて席に着く。
テーブルにはオムレツに色とりどりのサラダ、バターロールにポタージュ。

「いただきます」

この人料理できたんだな、なんて思っているうちに沢田綱吉は食べ始めていた。僕もつられて箸を取る。一番近くにおいてあったオムレツに手をつけた。

「・・・・・・」

おいしい。
そしてなんだか悔しい。

無言で食べていると、沢田綱吉がまたもや不思議そうな顔をしている。その視線に耐えられなくなって、今度は僕から話しかけた。

「・・・・・・なんです?」
「!いや・・・あの、なんかさ、骸いつもと違うから・・・」
「いつも?」
「えっ!あれ?だって骸、俺が料理とかすると、すごくおいしいです!って抱きついてきてたくさんキスくれるじゃん!ちょっとやりすぎだっていつも思うけど、なかったらなかったでさみしいというか・・・ほんとどうしちゃったの、骸?」
「・・・・・・・・・・・・」

再び絶句。
僕が、何だって?

・・・ああ、気が遠くなる。
思わず明後日の方向を見た僕に、沢田綱吉は恐る恐る話しかけてきた。
心なしか顔が青ざめている。

「…もしかして骸、俺のこと嫌いになった?」
「は?」

またしても脈絡のない話に、気の抜けた声が口を付いて出る。
ていうか僕、もともとマフィアの人間は嫌いなんですけど。

「きっとそうだ…!倦怠期ってやつだろ…
一緒に暮らすと相手の嫌なところがどうやっても見えるってリボーンが言ってた………
む、骸も…俺がどうしようもないダメツナだからその、…」

沢田綱吉は口を閉じた。瞳には水の膜が張っている。
その哀愁の満ちた表情に、僕は目を見張った。
美しかった。
綺麗だった。
彼の目から涙が零れ落ちたところで、僕はまるで操られたかのようにその頬を拭う。

「別に嫌いになったわけでは…」

そこまで言って、はっと我に返った。

ん?
今彼はなんと言ったか。

…一緒に暮らしているだと?

本気ですかそれは?

青を通り越して真っ白になった。
やっとの思いで言葉を吐き出す。

「一緒に暮らしている…?
どういうことです……?」

すると、沢田綱吉がこの世の終わりのような顔をした。

「骸……いくらなんでも冗談キツイよ…俺たち、同棲してもう1年以上経つんだよ?さすがにそれはへこむな…」

それを聞いてへこんだのは僕のプライドだった。
頭がくらくらして椅子から崩れ落ちる。
そのまま意識を失った。











「――ろ!骸!」

再び目が覚めたのはすぐだったようだ。倒れたところと同じ場所で、横になっていた。ただ、僕の頭が沢田綱吉のひざの上にあるということだけは違っていたが。
目を開けると沢田綱吉が目に涙をいっぱいにためて、骸、骸、と叫びながら抱きしめてきた。
温かい雫が僕の首筋を伝う。
抱きしめる腕は意外に力強くて、
それでもやっぱりやさしくて、
何でも許してもらえるようで。
そんな温かさに、僕は愛しさを覚えていた。
ああこんな人生もいいかもとか、マフィアは滅ぼしたいほど憎いけど沢田綱吉は別かもなんて、思ってしまった。
しかし天邪鬼な僕は、沢田綱吉を引き剥がす。

「………人の名前を大声で連呼しないでください、非常に不愉快です、
それとみっともなく泣くのはやめろ!」

ひっ!と沢田綱吉がのけぞった。
今の僕にはプライドとか、体裁とかいうものは存在してなかったらしい。
口をついた言葉は止まらず、まるで意志をもっているかのようだった。

「僕は泣き顔よりも、君の笑顔のほうが――」

沢田綱吉がきょとんとした。
あどけない表情に、思わず口が弧を描く。
なんだか平生の僕には信じられないことをいってしまう気がしたが、もうどうでもよかった。

だって、

気づいてしまったんだ

僕は


「愛していますよ、沢田綱吉」

途端、白い煙が視界をさえぎった。
引っ張られるような感覚。
次に目を開けた先には、見慣れた僕の部屋の天井。
どうやら戻ってきたらしい。
全く、さっきまでのアレは何だったのか。

少し伸びをして視線を落とすと、床にケーキの広告が落ちている。
こんなところにこんなものを置いた覚えはないから、おそらく犬あたりが置いたのだろう。食べたいとでもいう意思表示だろうか。
クフッと笑ってふと思いつく。

ああ、そうだ。

沢田綱吉に会いに行こう。

両手いっぱいのケーキと、この胸いっぱいの愛を持って。


END


何だこの終わり方・・・orz
精進します。小説って難しい!
補足すると、十年バズーカならぬパラレルバズーカ(今私が作った)にリボーンか誰かのいたずらでパラレルワールドに飛んでちゃったよ!的な。
無理ありますか。ですよね。
でもまあ骸さん的には運命の夢とかゆう話で片付けてそうですよね、うん、やっぱそれでいいや!←

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