紅雲の部屋
□満月
1ページ/1ページ
「なぁ、レイ……」
「なんです、ルカ……」
「レイは、満月は好きか?」
「どうしたんですか?突然……」
「いや、今宵は満月だから……」
「嗚呼……そういえば、そうでしたね」
ルカとレイはいつもの大樹の枝に腰を下ろしている。レイはルカの肩に頭を乗せている。
「ぼくは……あまり、好きではありません。なんだか、隠していたいものまで光の中へ晒しちゃいそうで……」
「そうか……わたしは好きだ。何者にも分け隔てなく光を当て、何事にも挫けず、いつも同じ場所で輝いている。と
ても美しく……」
「まるでユダ、みたいです。ルカが言う、満月は……ぼくより、綺麗ですか?」
レイの呟きと質問に一瞬驚いた顔をしたルカだがすぐにまさか、と微笑みレイの顎に手を添え、耳元で囁く。
「レイの方が、とても綺麗で美しいよ……」
「ルカ……」
二人は互いの唇を重ね合わせた。
優しく強く、互いの気持ちを伝え合うように、ずっと、いつまでも一緒にいられるように、このまま時が止まるようにと
真紅の夕日が輝くなか、二人はそう思わずにはいられなかった……