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□おやすみなさい
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「あまりユキノを苛めてやるなよ」
道中、あまりにも不名誉極まりないローグの発言に、スティングはピクリと眉を顰めた。
「んなことしねーよ」
「無意識にやるのがお前だからな」
「……」
こいつは。一体オレのことを何だと思っているのだろう。短くない付き合いとはいえ、たまにこういった言動をするローグをスティングは理解出来ずにいた。
「苛めるも何も、あんな女、眼中にないね」
「そういうところが、だ」
そうまで言われて、何も言い返せず仏頂面になる。
むしろ、なんでローグにそこまで言われなければいけないのか。忘れかけていた苛立ちが再び胸を巣くう。
「つーか、なんでお前はそんなにあの女に肩入れすんだよ」
一瞬の沈黙。だが、応えはすぐに返ってきた。
「ユキノは仲間だろ」
あまりにも簡潔的。至極分かり易いそれに、またしても苛立ちが倍増する。
「ケッ」
くだんね。そう吐き捨てて、帰路を急ぐ。
背後で、重苦しい溜め息が聞こえた。
「お前も、少しはオレやレクター以外にも目を向けてみろ」
何をバカな。
その時のオレは、心中でそう吐き捨てて、その言葉の意味を深く捉えようとはしなかった。
強さに溺れ、自尊心にまみれていた愚かな自分。いつだって、正しいのはローグで、間違っているのはオレだった。
だけど、それに気付けただけで、あの頃の自分にとっては凄い進歩なのではなかろうか。…などと、お気楽な今のオレは思ってみたり。
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