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□愛されて幸せ
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怪我をしてしまった。

両の掌をじっと見つめて、ユキノは思った。

別に大した怪我などではない。モンスター退治のクエスト中、衝撃に受け身をとった際、掌を擦りむいてしまっただけの話だ。これくらいの傷、討伐クエストにはご愛嬌というものだろう。

だけど彼はどうだろうか。

単独行動はなるべくするな。クエストは誰かとチームを組んで行け。散々、口を酸っぱくして言われてきた。

だけど今回、ユキノはその言い付けを守らずに単体で仕事に向かった。

反抗心があったわけではない。ただ、本当になんとなく…。ここ最近は優秀な人ばかりとクエストに行っていたから、出番の減った星霊達がフラストレーションを起こしていたのも起因だ。ライブラはそうでもないが、ピスケスなどはなかなかに好戦的である。

怒る、だろうか。それとも、呆れるのだろうか。

こんな傷、なんてことはない。だけど、彼の瞳が怒りに滲む様はあまり見たいものではなかった。冷たい鋭利な刃物のような彼の瞳など、もう思い出したいものではない。

「…おい」

ビクリと、肩が跳ねる。

恐れていた、そして望んでいたその声が、すぐ目の前から落ちてきた。

心の準備など出来ていない。それより何より彼は今、定例会のはずである。

「お、おかえりなさい、スティング様」
「……多分それオレの台詞」

顔を上げた先に居たのは、やっぱりその人であった。



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