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□言えなかったスキの言葉
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「愚か者が!!!」

ミネルバの怒声が、セイバートゥースのギルドに大きく轟いた。

「わー、待った!待ったお嬢!つーか何怒ってんの!?」
「ええい、言い訳は聞かん!!貴様は、貴様はやってはいけないことをした!!!」
「だから何だってんだよ!!」

お嬢の手から放たれる魔法攻撃をスティングは身軽に避ける。仮にもここは屋内。しかも重要な書類がいくつも散漫する執務室だ。お嬢の攻撃が必要最小限に抑えられているからこそ出来た行動である。

「展望室だ!」
「はあ?展望室ぅ?」
「妾が気に入っておる展望室がプールに変わっておった!!」
「……あ」
「これは一体どういう了見だ、スティング!!」
「うわ、お嬢ストップ!話せば分かる!!いや分かんないけど、とにかくストップ!!」

コンコンッと背後でノック音がした。聞き慣れた軽い音に、その持ち主を知る。

「バカ、開けるな!!」

が、一足遅かった。覗く白銀の色にスティングは舌打ちをして、その小さな身体を掻き抱いた。迫る魔法。そこに光を放ち、相殺した魔法が小爆発を起こす。

いくつかお釈迦になったであろう書類を想像して気分が落ちた。もうもうと立ち込める煙、唖然とする腕の中の少女、煙の向こうで怒りを静めたお嬢の姿。

「もう!何をやっているんですか!」

腕の中、少女の雷が落ちた。



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