short

□前
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なんだか最近は仕事尽くめの毎日だなー、なんて事を思いながらロキは荒い雪道をザクザクと突き進んだ。少し後ろには酒瓶片手にフラフラと自分の後をついてくるカナが居る。その身に纏うのはロキが魔導士として愛用しているモッズコートと、青の色眼鏡だ。貸した…というよりは引ったくられたという方が正しい…。こんな雪山で水着のような格好をされるよりマシだが、それより何よりサンダルを穿いた剥き出しの足が見ていて痛い。非常に痛い。

「…カナ。僕の靴、貸そうか?」
「はあー?そしたらアンタが裸足になるじゃないのさ」

うん、人のコートをふんだくった人のセリフじゃないよね。いやまあ別にそれはいいんだけど。

「それに、ちゃんとアンタが歩いた足跡辿って歩いてるし、へーきよへーき。こんなの屁でもないわ」

その足取りが危ういから言っているんだけど、…まあ彼女がここまで言い張るのだから本当に平気なのだろう。

目を細めて、頂きを仰ぎ見る。足元はこんなにもまっさらな雪で埋まっているというのに空は快晴だ。煌めく雪原が目に痛い。色眼鏡の無いクリアな視界に違和感を抱きながら、そっと耳を澄ます。微かに届く戦闘音に眉を顰めた。

「どうやら先客がいるようだね」
「えー?なーんだってー?」
「……カナ。酔いはまださめない?」
「うっひゃっひゃ」

………………。



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