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□ブロンドのサンタクロース
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「サンタさんはいないの?」

幼い頃の私が、幼い姉に問う。それを問われた姉は、困ったように細い首を傾げてみせた。

「ユキノは居ないと思うの?」
「わからない」
「そう。じゃあ姉さんも分からない」
「姉さんにもわからないの?」

幼い私には、それが我慢ならなくて、ぷくうっと丸みを帯びた頬を更に丸くした。子どもというのは総じて知りたがりである。空はどうして青いのか。どうして鳥は空を飛ぶのか。どうして人間は飛べないのか。大人になるにつれ自然と身に付く知識を矢継ぎ早に問いたがる。周囲からしてみればさぞ困り者だろう。

「じゃあ、ユキノのところにサンタさんは来ないの?姉さんのところには?姉さんはとっても良い子よ?」
「ふふ。ユキノもとっても良い子だゾ」

大好きな姉が私の頭を撫でながら言う。その言葉だけで、その温もりだけで、現金な私の機嫌はコロリと浮上する。

「ユキノは良い子だから、きっとユキノだけのサンタさんがいつか来てくれるよ」
「私のところに来るくらいなら、姉さんのもとには真っ先に来てくれるわね」
「…そうだといいね」

その年、枕元に届いた人生初めてのクリスマスプレゼントにユキノは大層喜んだ。

少ないお小遣いを叩いて用意してくれたのだろう、私だけの小さなサンタクロース。真っ白なヒゲを蓄えたおじいさんより、よっぽど嬉しい贈り物だ。



―――良い子にしていれば、サンタさんは来てくれるのよ。



使い古された言葉を、どこかの母親が小さな子どもに言い聞かせる。それを横目に、ユキノはイルミネーションで彩られた街並みを足早に突き進んだ。銀の髪に飾られた青いバラが、贈り主を想って泣いているようだ。



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