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□ブロンドのサンタクロース
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おまけ
「ん?見ないものを付けているな」
やはり同じ女だからだろうか。目敏いミネルバの指摘に、ユキノはスティングから貰ったばかりのプレゼントをちらりと一瞥した。傍らに座るスティングは、聞こえているだろうに素知らぬ顔でコーヒーを口に含む。
「この時期だしな。誰かからのプレゼントか?」
ローグの問いに、ユキノはふわりとはにかんだ。紅潮した頬がユキノの愛らしさに拍車をかける。
「はい。とても大切な方からいただいたんです」
「ごほっ!」
「「………」」
墓穴である。何も反応しなければ分からなかったであろうに。素直すぎる我がギルドのマスターに、二人は憐憫の瞳を向けた。
「スティング…」
「おまえな…」
「し、仕方ねーだろ!めちゃくちゃ不意打ちだったぞ今の!」
…まあ、気持ちは分からなくはない。
「ユキノさん。それ、スティング君からのプレゼントなんですか?」
くりくりとしたレクターの瞳が、物珍しげにユキノに向けられる。
「はい。どうですか?」
「とっても似合ってますよハイ」
「フローもそーもう」
素直な賛辞が嬉しかった。満面の笑みを讃えて、その言葉を受け止める。
「やっぱり女性にはプレゼントが効果覿面なんですかねー」
「フローもそーもう」
そう言うレクターは、最近ではフェアリーテイルのエクシードであるシャルルに熱烈片思い中だ。綺麗な白い毛並みのネコを思い浮かべて、ライバルも多そうだと独りごちる。
「レクター。オレは別にそういうやましい気持ちでプレゼントを贈ったわけじゃねーぞ…?」
「無かったのか?」
「ねーよ!!」
「妾には何も無かったというのに。失礼な奴だ」
「あ、あの」
「スティング君が女性にプレゼントを贈ったのなんて、これが初めてですよねー」
「フローもそーもう」
「……勘弁してくれ」
頭を抱えるスティングに、ユキノはオロオロと手をこまねく。
「す、すみません」
「いや…、墓穴掘ったのオレだし」
何を以て彼が動揺したのか理解出来ないユキノにはスティングの言葉に首を傾げるばかりだ。
そんなユキノに、スティングはクスリと笑う。
「気にすんなってこと」
果たしてプレゼントに効果があったのかは分からないが、すっかり元気になった様子のユキノにスティングは気のいい笑みを見せる。クリスマスが近付くにつれ、彼女が沈んでいたのをスティングはちゃんと見抜いていた。―――きっと、面白おかしく騒いでいる周りの連中もそうなのだろう。ユキノの笑顔に誰もが安堵の息を吐く。
それがスティングには誇らしかった。
「来年はもっとパーッと祝うか」
「宴ですか?」
「クリスマスパーティー、わーい」
「来年の話だぞ、フロッシュ」
「来年は妾手製のケーキをふるってやってもよいぞ」
「楽しみですねーハイ」
こんな毎日が翌年も、その先、ずっと先まで続きますように。
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