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□七夕、君に願いを
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「あら。コロッケの数が足りないような…」
「スティングが摘み食いしたー」
「あ、こらフロッシュ!おまえにも分けてやったろーが!」
「そなた、先程から摘み食いが過ぎるぞ」
「宴の前に腹を膨らます気か、おまえは」

周りから向けられる呆れ眼に、無邪気に笑うスティング。悪気はないのだろうが手伝う気がないのであれば厨房から出て行ってくれないだろうか。忙しい調理班は、そんな彼にちょっぴりおかんむり。

「星見酒しよーぜ」

スティングの何気ない一言で、急遽宴会と相成ったセイバートゥース。最初にその言葉をかけられたのは、レクター、ユキノ、ローグ、フロッシュ、ミネルバと、最早いつものと言っても過言ではない仲良しメンバーのみで、それだけなら内輪でひっそり楽しむに終われたのだが、それを聞きつけた他のメンバーが一人乗って二人乗って、結局ギルドの全員で宴会コース。やれ酒が足りないツマミが足りないとなれば、厨房に籠もる人間はそれなりに忙しい。

夜の宴に向けて、次々と作り上げられる料理はスティングの胃袋を刺激した。ちょこちょこと摘み食いが絶えないスティングに、とうとうユキノが重い腰をあげる。

「スティング様」
「おー、悪ィ悪ィ。あ、それも美味そうだな」
「もー。ちょっとだけですよ」
「ユキノ。甘やかすな」

ローグの忠告も意味をなさず。出来上がったばかりの巻き寿司を切り分けて、彼の口にコロンと転がす。ユキノさん、怒りに来たんじゃないんですか。何処からかそんな突っ込みが聞こえてくるも、ユキノがスティングに甘いのは今に始まった事ではない。

「美味い!」
「宴会の前にそんなに食べて…。お酒、入らなくなっちゃいますよ?」
「へーきへーき。ユキノは料理もうまいなー」

クシャクシャ、頭を撫で回されてユキノの頬がポッと染まる。

あっちいー。

誰かが零した悪態は、厨房の熱気に向けてではないだろう。

「マスター。酒ってこれで足りますかねー?」
「今、買い出し班に行かせてる。それでも足りなきゃまた後で買い足しゃいーだろ」
「よっし、こっちのツマミは完了だ」
「お、美味そうだなソレ」
「げ、マスター!おいユキノ、マスター遠ざけてくれ!!これ以上摘み食いされちゃかなわねーや。シッシッ」
「もうしねーよ!ったく、人を犬猫みてーに」

何だかんだ言いつつも、これだけ人が集まるのはスティングのカリスマ故ではないだろうか。

賑やかな人並みの中心、楽しげに笑うスティングを見て、そんな事を思うのだった。

「スティング。暇なら皿でも並べとけ」
「マスター。ちょい邪魔です」
「あ!!マスターまた摘み食い!」
「今度はオレじゃねーよ!!」
「じゃあなんでコレなくなってんですか!ほら!皿!!空っぽ!」
「知らん!!!」
「フローもそーもう」
「「「………。おまえかフロッシュ!!!」」」
「ダメだろう、フロッシュ。さ、あっちで大人しく待ってような?」
「てめ、ローグ!フロッシュにだけ態度違いすぎねーか!?」
「当前だ」
「んだと!?」
「当前だ」
「だー!!!お二人共!!喧嘩なら外でやってくれー!!」
「全く。喧しくて適わん」

人望、あるかなぁ…?



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