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□七夕、君に願いを
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星見酒。本人、知ってか知らずか、今日はそれに相応しい七夕の日。昼に浮かんでいた雨雲もすっかりと晴れ、今は満天の夜空が広がっていた。天の川もくっきりだ。

庭に引きずり出したテーブルセット。出来上がった料理の数々。酒。何とか形となった宴会に、音頭をとったのは一体誰だったか。始まりがどこかも分からず、酒を飲み交わす面々。擦れ違う人、皆に乾杯を求められグラスを掲げていたユキノはある人物を探していた。

居ないなぁ。そう首を傾げたところで、目にも鮮やかなブロンドを見つける。居た。

星見酒をしよう、なんて誘ったのは自分のくせに彼はオルガと飲み比べ中だった。これが最初に誘ったローグやミネルバが相手ならばまだ良かったのだが、二人を見たユキノは結局誰でもいいんじゃないかと不貞腐れてしまう。多分、ローグやミネルバだったとしても結果は同じなのだろうけど。結局のところ、彼女が選んでほしいのは自分ただ一人だ。

「お、ユキノー」

声をかけるかかけまいか、悩んでいた所でスティングの方が先にユキノを見つける。ヘラヘラと浮かぶ笑みは、酔っ払いのそれだ。早くも出来上がっているらしい。

「おまえも飲み比べに参加するかー?」

素面の彼ならば、絶対に口にしないセリフだ。だって彼はユキノが下戸である事を知っている。が。

「私、まだ殆ど口をつけてませんからハンデじゃありませんか?」

どうやら、出来上がってしまったスティング相手にならば勝てると思ったようだ。強気なユキノの発言にスティングの口角が上がる。

で、結果。

「オレの勝ちー♪」
「……………」
「大人げねーぞ、スティング」
「うっせーオルガ」

酔っ払いは手加減なんて知りません。

テーブルに突っ伏すユキノの視界はクワンクワンと回ってる。

「おーい、大丈夫か?」

流石にやりすぎたかなと心配になったスティングがその顔を覗き込めば、焦点の合わない亜麻色の瞳がキッと彼を睨んだ。

「いじわる」
「は?」
「いじわるいじわる。すてぃんぐさまのいじわる」
「お、おい」
「星見酒しよーって言ったのに勝手にいなくなっちゃうし、私お酒ダメだし頭回んないし、これじゃあお喋りできません」
「…………」
「ばーかっ」

お喋り出来ない、なんてどの口が言うのか。寧ろ普段より口は回っているように思える。若干呂律は怪しいけども。

だが、スティングの気にかかったのはそんな事ではなく。

「お喋りしてーの?」

むうっと唇を尖らせるユキノに、堪えきれず吹き出した。

「おっま、かっわいーな!」

ぐりぐり、力の限り抱き締めてやりたかったが、そこは加減して。彼の腕の中、愛でられるユキノは漸く機嫌を直した。

「すてぃんぐさますてぃんぐさま」
「んー?」

こしょこしょ、可愛らしい耳打ちにスティングの頬は緩みっぱなし。

「おう、いいぜ」
「ホントですか?」

華やいだ二人の空気に、オルガはヘッと鼻を鳴らし、レクターはごちそうさまですと手(前足?)を合わせた。そうです、彼も一緒に居たのです。



“2人っきりになりたいです”



囁かなユキノのお願い事は、動物的な聴覚のレクターと滅神魔導士のオルガの耳にはしっかりと届いたのだった。



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