□マモ縁マモ
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縁寿様は壊れてしまった
1998年からずっとこの部屋に閉じこもっている

「縁寿様」
「何?マモン」
「生活必需品?でしたっけ。買わなくて良いんですか」
「別に。食べ物ならあるし」
縁寿様はベットの脇にある冷蔵庫に視線だけを移した。
「だからって――…っ!」
縁寿様は私をベットの中に引き入れ、私を組み敷いた。
「何?マモン。主に口答えする気?」
「しっ、失礼しましたっ。」

室内な上、外に出ることもない為、上着は最近着ていなかった。

縁寿様は私のネクタイを取って手馴れた手つきで外した。
「縁寿様?またですか?」
「悪い?一人だとすることもないの」
縁寿様は髪を縛っていない。壊れたから。
前はずっと家に篭っている時でも着けていたのに、1998年に天草に壊されてから、着けていない。

ふと、冷蔵庫の隣を見た。
サイドテーブルの上に、バラバラになった、髪飾り。
「・・・。」
アレと縁寿様は同じなのかと思った。
「…縁寿様。」
「何?マモン。」
「髪飾りを一緒に直しませんか?」
二つが同じなら、髪飾りを直せば縁寿様も直ると思った。
「…。」
縁寿様はサイドテーブルを一瞥して、
「ムリよ。」
と言った。
ずっと触っていないらしく、埃をかぶっていた。
「あ、じゃ、じゃあっ、髪飾りを壊した奴を抉ってきますっ!」
「私もそうしたいけど、天草はもう壊れちゃったわ」
視線だけを後ろに回す。
部屋の隅に、人形のように動かない、天草。
普通の人なら「何だ、人形か」と思ってしまう程に、放って置かれていた。目を閉じてすらいない。
死んだ目で。部屋の隅で。埃を被って。人形以外の何でもない。
「天草が戻ってきたら、この髪飾りを直させようと思うの。」
縁寿様は笑っていた。でも目は死んだ魚のように無機質で。
「直せなかったら、また人形に戻って貰おうかなって思ってて…」
嗚呼、私の主は壊れてしまった。
この家で自我を持っているのは多分、私だけ―――…。
私を置いていくのですか、縁寿様。
私は縁寿様が好きです。愛しています。
どこまでも付いていきます。
貴女のためなら、何処までも堕ちていける。
大丈夫。
皆もいる。
恐くない。
一人で地獄になんて行かせて上げませんよ。
私だっていきます。
何処までもお供するって決めたから。
それに、私は強欲のマモンですよ?

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