Noise
□Prologue
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耳に響くのは雑音、雑音、雑音
脳裏に微かに残る記憶を巻き戻しては再生して、巻き戻しては再生して。
何度も何度も繰り返す
愛しいお前の顔を記憶から引きずり出して焼き付けようと何度も何度も何度も何度も。
早くお前に会いたくて、お前の笑顔を確かめたくてバカみたいに笑顔を想像してみたり
一週間も会っていなかった寂しさともうすぐ会えるという気持ちがぐちゃぐちゃに交じり合って
心に『油断』を生み出した。
突然のクラクション、一瞬フラッシュバック
遠のく意識の中、やっぱり頭に浮かぶのは愛しいお前で。
あぁ、死ぬのか・・・なんて最後まで死に恐怖は無く、"お前"を失う怖さだけが渦巻いていた
挙句の果てには走馬灯までもが真っ赤に彩った一生を再生し始める
生まれて、何度も何度も喧嘩して、殺して、暗殺部隊に入隊して、10年もの時が流れお前に出会った
何とも雑な説明だけど、これは俺の中では何よりも愛しい思い出
お前に出会えたことが俺にとっての一番の幸せだった
同性愛という壁も、どちらがいつ死ぬか分からない恐怖でさえも二人で乗り越えてきた
俺もお前も愛し合っていたと思う。
少なからず俺は「フラン」が好きだったし、愛していた
たまに見せてくれる笑顔が何よりも愛しかった。
抱きしめてくれた時は素っ気無い事を言ってしまった事も多かったけれど、本当はすごく嬉しかったんだ
あれ、お前の顔が分からない。
名前は?こんなにも好きなのに、分からない
苦しい、お前を忘れるのが苦しい、嫌だ、失いたくない、嫌だ嫌だ嫌だ
閉じられた目は静かに開き、ただ一筋の涙を流して
この世に「後悔」と「愛」を残し、天を仰いだ
羽音に耳を澄まして
今、空に還る。