頂き物

雨とダージリン
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「雨って灰色に見える」
「トシもそう思う?」
「も?」
「オレも灰色に見えるんだ。だからミルフィーユが食べたくて」
……よく分かんねぇ。
俺にはミルフィーユと雨なんて繋がらない。
「乗ってるイチゴが綺麗に映えるじゃん」
赤と灰色。
「って、トシには分かんないだろうけどね」
「ちょっと分かる……かも」
「嘘ばっかり」
「スグルは赤だと思うし」
「はぁ?」
「俺が灰色だと思うし」
「うーん、だから……?」
「あぁ……なんだろうな」
俺の曖昧な返事に、英が怪訝な視線を向けてきた。
「口からでまかせで物言うの、やめなよね」


ウェイターが運んできた紅茶とミルフィーユがテーブルに並んだ。
「……砂糖入れすぎ」
「いつもより少ないです」
英はストレートの紅茶に砂糖をスプーンで四杯投入した。

「俺も……スグルがいれば映えると思う」
「だといいんだけどね」
「本気で思うんだけど……」
「……」
イチゴを飲み込んでから英は笑った。

「今でも、いつでも、いるじゃんか」
「うん……」
「……もっと近くにいて欲しい?」

俺はフォークでイチゴを刺すと、英の口元に押し付けた。
「やる」
英は満面の笑みでそのイチゴを頬張った。
「お嫁さんに行ってあげる」
何か俺一人で馬鹿じゃん。
今日も英のペースに乗せられてやんの。
英には弱いのかもしれない。
いや、弱いと思う。絶対。
俺はちょっと焦りながらミルフィーユを口に入れた。

「あ……」
「……何か?」
「間接ちゅー、だ」
英の阿保たれ。
そんな顔で見るなよ。
何か、何で、俺が変な汗かかなきゃなの?
あぁミルフィーユの味が分からない。
ただ、甘いのが舌に溶ける。



あぁ……本当に最近、雨ばっかりだ。


Fin.


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十野芙丈様、本当にステキな小説ありがとうございました。
リクエスト通りで大満足です!
これからもステキな小説の更新楽しみにしてます!


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