短編集

サクラサク
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「…あのさ悠斗」

「ん?」

「本当はまだ隠しておこうと思ってたんだけど…」

「?」

俺は勘汰の顔を見るため、体を離そうとしたが、勘汰が「このままで」って言うから、抱き合ったまま話を進めることになった。

「…やっぱりさ、大丈夫って思ってても寂しいじゃん。離れ離れって」

「…そりゃ」

勘汰の腕に込める力が強くなった。

「だから………一緒に住まない?」

「…………………は?」

俺は無理矢理勘汰の腕から逃れると勘汰の顔を見た。真っ赤だった。それがなによりも本心だという証拠になるわけで…。

「せめて家では一緒に居たいなって…」

「は、え。だっていきなり……お金だって…………!もしかして…」

「そう。そのためのバイト。悠斗と一緒に住みたくて貯めてるんだよ。結構貯まってるはず…うん。」

勘汰…お前ってやつは…。

「最近、なかなか二人の時間もつくれなくて本当ごめん。でもうわぁ!」

俺は勘汰に抱き着いた。
なんだか目元が熱い。

「どあほ勘汰!」

「ごめんね」

「違う!謝らないで……」

「…うん。悠斗泣いてる?」

「…………」

勘汰の馬鹿。そんなこと言うから涙が出て来た。

「ごめんね」

「…だーかーら…ひっ」

「ははは。…一緒に住んでくれますか?」

もう声も出せないから俺は大袈裟なくらいおおきく頷いた。
そして顔を上げると俺は勘汰に向き合った。
きっと俺の顔は涙でくしゃくしゃだったはず。でもそんなこと気にしない。
勘汰が幸せそうに笑っていたから。


―――――――――そして…、

「これどこ置く?」

「んー…この辺り?よくわかんね。センス無いからなぁー」

大学生になった春。俺達はアパートの一室を借りて一緒に住むことが出来た。
あのあと俺も一緒に必死にバイトして沢山お金を貯めることが出来たのだ。
安くて少し年期の入ったアパートだけど、窓からは立派な桜の木が望めて、良い眺めだ。

「ベッドどーする?」

「此処しか置くとこないでしょ」

「結構場所とるね。ダブルベッドって」

「狭いからな」

ベッドのみ新しいものを購入し、それ以外の物は家にあるものや、家族の支援で揃えた。
…これから大好きな恋人との新しい生活が始まるだなんて…最高。

「悠斗楽しそう」

「勘汰だって」

俺たちはお互いの顔を見遣ると、笑い出した。

「さて、さくさくと片付けしちゃいますか」

「おーう。てか終わるか?これ」


「終わるって。…早く勘汰とラブラブしたいんだからさっさと手進めなさい」

「…ばーか」

これから始まる素敵な日々に想いを馳せて、恋人と一緒に片付けを続ける、そんな春の日の午後。
窓の外の桜はほとんど散ってしまったけど、俺たちの桜はまだまだ咲き続ける、散ることを知らない桜。




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