イマミライ

第三話
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-イマミライB-



最近すっかり暖かくなった。今までの寒さは本当に何処へやら、昼になればコート無しでも平気なくらいポカポカだ。桜も大分咲き始め、そろそろお花見の季節かなぁなんて外を見ていると、ついさっきまで俺の隣ですやすや眠っていた恋人、礼二がムクリと起き上がり、

「何してるの」

って眠たそうに聞いてきた。
その表情や雰囲気が可愛いので、ぎゅって抱きしめたら一撃を食らったわけなんだけど。

「いたい…ただ外の桜見ていただけだよ」

「抱き着く必要はないだろ」

そう言うと礼二は窓の近くにちょこんと座り外を眺める。

「結構咲いてきたんだなぁ」

桜に見とれている横顔があまりにも綺麗で思わずちゅーしちゃったけど、礼二は今度は殴ることなく照れるだけだった。顔は耳まで真っ赤で本当に可愛い。

「礼二可愛いー」

流石に可愛いには怒ったらしくまた殴られてしまった。
痛がる俺を尻目に礼二はそそくさと着替え始めていた。

「あれ、もう帰っちゃうの?」

なんでー。今起きたばっかなのに。そんなに可愛いって言われるの嫌だったのかな。

「お前は俺に帰ってほしーのか?違うよ。外に桜見に行こうと思って」

「それ、俺も一緒?」

「当たり前だろ。嫌なのか?」

そう言って優しく笑う礼二が可愛くて可愛くて、同意の意味を込めて抱き着けば、礼二に殴り飛ばされた。でも顔が真っ赤だったから嬉しいんだと思う。(多分)
俺もさっさと着替えて、一緒に外にでた。


今日は思ったほど暖かくはなかったんだけど、桜並木のある公園には日曜日の午後って感じで、家族やらカップルやら子供たちやらが各々の時間を過ごしていて、穏やかな時間が流れていた。

俺達は公園内の空いているベンチに腰掛け静かに桜を眺めていた。俺は桜も眺めたかったんだけど…礼二を眺めたくてちらちら覗いていたら案の定殴られた。

「もう少し桜に集中しろー」

「無理。だって礼二がいるから」

桜と礼二はいい具合にマッチして本当に綺麗なんだよなぁ。

「俺はいつだって未来の隣に居るだろうけど、桜は今だけだろ」

その一言に相当喜んだのは言うまでもない。

「それに…昨日嫌ってほど見ているだろ顔」

そう言いながら段々真っ赤になってくる礼二が本当に可愛い。
思わず抱き着きたくなったけど外だから我慢。きっと何回も殴られるだろうし、機嫌を直すのに相当苦労するだろうし。

「手…くらいならいいぞ」

思ってもみなかったことを礼二から言われ素直に驚いていると、

「嫌ならやめるからな!お…れだって恥ずかしいんだからな!」

なんて顔真っ赤にして言うもんだから本当に可愛い。勿論嫌なわけがないので礼二の手をしっかり握った。
礼二は一瞬驚いていたけど、すぐに微笑んで桜に視線を移した。その様子を目で追っていた俺も自然に桜に視線を移した。

「綺麗だなあー。でも穏やかすぎて眠くなってきたわ…」

「お前は本当駄目だな…もう帰るかあ?」

「いいの?」

「お前がそんな状態じゃ見る気にならねー」

「ごめん」

「いーけど別に。慣れてるから」

そう言って笑う顔に胸がドキドキってなっていた。

「じゃあ最後に、この目に礼二と桜を一緒に焼き付けとくわ。」

と言って礼二の顔をじっと見る。やっぱり真っ赤になってしまっている礼二がいた。可愛いなあ。
桜のピンク色と礼二の頬の色は本当にマッチしていて綺麗だ。

もっと眺めていたかったけど、礼二が可哀相なためやめといてあげた。

「よし帰るか。勿論手繋いで?」

「バカ言え。さっき俺を見たので終わりだボケ。」

やっぱり…と思っているとそそくさと帰っていってしまった。

「待ってよー」

それでも礼二はさっさと行ってしまう。ご機嫌ナナメになっちゃったかなあ。俺見すぎた?

しばらく礼二を追って歩いていたけど、急に礼二が止まるもんだから俺も礼二の後ろに列ぶようにして止まった。

「どうした?」

どうしたのかと思って、礼二を覗くと、

「ん」

と言って手を差し出された。

「手…繋ぎたいんでしょ?」

これは夢かな?
でも真っ赤な礼二の顔を見れば夢ではないわけで。本当に愛しいわけで。

「…公園は人多かったから…でもな嫌なら…」

俺は話しを遮って礼二を抱きしめた。礼二は驚いたようで目を丸くしている。

「…アホ!手だけだ馬鹿!」

必死な礼二が可哀相だからここまでにしておくか。俺は礼二の手をとり、優しくしっかりと握りしめた。なにがあっても離さないように。

礼二は怒っているものの顔を染め、しっかりと握り返してきた。

それが本当に嬉しくて、愛しくて、絶対にこの手を離さないって決めたんだ。




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