連載「ボールと白」

□Q07
1ページ/2ページ








『ハァハァ…』

「白ちん真面目だねー、アップでそんなに疲れる人いるんだー」

「ただ単に体力がねぇだけだろ」




両手両膝をついて床に汗をぽたぽたと落とす。
掃除する人ごめんなさい。
だけど、予想以上のハード差に身体がついていかなくなって、もう足がガクガクの何とやらだ。



黒子は「大丈夫ですか?」と、黄瀬は「これから慣れるっスよ」と、桃井は「汗だくも素敵…」なんて言う。
水筒の茶で喉を潤す、ああ氷をたくさん入れてもらって正解だ。
ふぅと一息つく僕の後からキャプテンの声がした。




「5分間だけ青峰と1オン1しておいで」

『はいっ』




タオルで首の汗をぬぐう。
Tシャツの中は包帯のせいでむんむんして気持ちが悪い。
皆が休憩している間の5分間は僕の実力を試す時間。
ダンダンッと音を鳴らしながら待ちかまえる青峰はこっちを見ていた。


タタッ




「あれから成長してんのか?」

『分からないけど、よろしくお願いします』

「っは、お前からでいいぜ」




ポイッとボールを渡され、青峰は腰を低く構える。
まだ少し慣れないボールを体の前でドリブルさせながら青峰を見る。

その瞳は美しく、バスケが大好きと物語っていた。
そんな彼に、生半可な気持ちで戦ってはいけないと思った。





「お手並み拝見だな」

「白ちん強いのー?」

「ダンクできんっスよ」

「緑間君、僕の前にこないでください」

「俺が先にいたのだよ」

「大人しく見ていろ、外周させるぞ?」




周りがざわつく。




「ドリブルは上手くなったようだな」

『青峰のおかげでね』

「はははっさっさと来い、うずうずしてんだよ」




体格のいい青峰を前にしてどうリングまで行くか…。




「(さぁ、お前のダンク封じてやるぜ)」




そうニヤリと笑う俺は目の前の相手を見失った。

否、目でとらえきれなかった。




「!!」

『えーっと、次は…』

「なっ、いつの間にすりぬけ…!」




早ぇ!もうリング下まで行ってやがる

だが、こんなんでやられるほど、俺も落ちぶれちゃいねぇーよ!!




俺は奴を上回るスピードでボールを上に持ち上げた白ノ藤の前へ立ちふさがる。




『!』

「へっ、まだまだ甘いな」

『やっぱり…一筋縄ではいかないか』




そう呟いてボールを下した。
驚いた俺はリングの横まで行った白ノ藤をふさぐという行動を脳の指令させなかった。
もうリングの後にいるコイツのゴールを入れられる筈がねえ。
プロの選手がリング裏側でゴールする奴はいつが、コイツはまだ初心者。




『やはり君は強い、良い才能を持ち過ぎているようだね』

「あ?何言っ…」

『僕じゃ、敵わない』




ああ、諦めるのか。
その言葉を聞いたとたんそう思う。
そんな諦めの速い奴が俺は大っ嫌いだ。


ボールを片手に俺を横目で見る白ノ藤を見降ろす。
が、奴は真剣な表情をこちらに向けた。




『なんて思わない。』

「!!(この構えは…!!)」




以前ストバスでダンクを決めた構えだ。
低い身長を更に低くし、ボールを両手でガッチリを掴み上を見上げる。



そんな奴に俺は心を奪われた。



テメェの瞳はキラキラしてんな、なんて暢気な考えをする自分がいた。



思い切り俺の身長ぐらいまで飛んでボールを両手でリングに叩きつけようとする。





「させっかよッ!!!」

『っ!』




切り替えの遅かった俺は片手でそれを止める。
少し眉を寄せる白ノ藤、それでも奴の両手は片手の俺の腕力より劣っていた。


バシッ!!


『っ!!』

「っしゃ!」




そのまま俺のほうのリングへとボールをくぐらせた。







.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ