頂き物

□一番好きな人
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俺が演じたももがニノの好きなタイプの人間であるって言われても、そんなのは結局俺の嫉妬心を膨らませるだけで、褒め言葉でも何でもない。
ふと顔をそちらに上げれば、テレビ画面に釘付けの恋人がぶつぶつと呟いていた。

「いやーももかわいいですねぇ!本当、一家に一台欲しいくらいです」

そんな妄想をもう何度もでれでれと垂れ流しにしていて、見ているこっちがごちそうさま、と言いたくなるくらい。
ねえ、その瞳は誰を見て居るの?
もしかして、ただの「松本潤」は嫌い?

ぐるぐると頭の中で巡る思考は限がなくて、どうしようもない頭を冷やそう、と自室に籠ろうとした。
…機嫌の悪い原因の人は画面の中の俺にご執心の様だし?
俺はいなくてもいいかなぁ、って。

そりゃあね、俺だってニノの演じた役柄が好きになることがある。もしこんな人がいたら、ニノ以外にも好きになっていた人かもしれない、なんてことまで考えたこともある。
だけど、だけど、俺はそれが偽りのニノだって分かってるわけで。
それを本当に欲しいとは願ったことがない。

ベッドにぼふん、と倒れこんだ。俺の匂いと、それに混じって少しだけニノの匂いのするシーツは、それだけで涙を誘う。うう、泣くもんか、俺は眼をぎゅっと閉じて、現実から目を逸らそうとした。

途端、

「なんでいなくなっちゃうんですか」

耳元で低音が響く。それと同時に、苦しいほどに抱きしめられた。
よく知った温もりは俺を安堵に誘い込むけれど、同時に今は、これ以上ない恐怖にも陥れた。

俺に近づかないで。俺は汚い、醜い感情しか持たないから。

ニノはぎゅうぎゅうと締め付ける力を強くする。シーツに顔を埋めているせいでその表情は見えない。

「急にいなくなっちゃうから、びっくりしたじゃないですか」

ねえもしかして、

「ももに、嫉妬しました?」

がば、と上半身を上げた。振り返ってその表情を見るといつも通りの笑顔で、だけど少しだけ困ったような顔だった。

「…そんなことない」

また元の体制に戻る。
そんなことない。俺は嫉妬なんてしてない!

「ね、あるでしょそんなこと。」

風呂に入ってから暫く経ってもシャンプーの芳しい匂いは鼻を突く。その髪をさらさらと愛でながらニノは言った。

「潤君、俺はね、ももっていうキャラクターも好き。でもなんでももが好きになったかっていうと、潤君、貴方が演じていたからなんですよ」

「俺は潤君が好きなんだもの。潤君の化身、って言っても過言ではないドラマの役柄を、俺が好きになって当然でしょ?」

ま、一番はやっぱり潤君ですけどね。

「…やっぱりって言うな」

そういいながら顔を上げて、ニノの唇が近づいてくるのをまるで他人事のように眺める俺はきっと今顔を真っ赤にしていることだろう。
吐息の合間に好きです、潤君、と溢すニノの声を聞きながら、だんだん遠のく意識の奥で、


ももが
「しょうがないなあ」
って、笑ってる気がした。

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