頂き物・捧げ物・記念

□記念
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の底で思うこと

「レッドはさ、いつも一緒にいてくれる存在がいていいね。」
「え?」
それは日も傾きかけた夕刻のことだった。僕、レッドとリンクは森でのんびりしていた。そろそろ帰ろうかというときに、突然リンクはあんな発言をした。唐突なことに驚いて、僕の思考は一瞬止まる。しかしすぐに、一緒にいてくれる存在がポケモン達を指すことに気が付いた。
「まぁ…うん、ゼニガメ達には感謝しているよ。」
が、如何せんリンクの意図が読み取れない。それを悟ったらしいリンクは、苦笑して言った。
「いや、ごめん。急にこんなこと言われてびっくりするよね。…オレにもいたんだ、相棒と呼べる存在が。」
そしてリンクは悲しそうな顔をした。僕はおや、と思った。
「いた?」
リンクは過去形で言った。今はいないということなのだろうか。
「うん。でも、もういない。今から考えるとあんまり長い期間じゃなかった…。ハイラルを救うのにかかった時間だけだった。そのうちの一人が、黄昏時が好きでさ。ちょっと思い出しちゃったんだ。」
僕はリンクに身を寄せた。要するに、リンクは今、寂しいんだ。
「リンク、またいつか、その人たちにも会えるよ。」
リンクは困ったように笑った。そして言う。
「…うん、そうだね。」
“……もう、会えない存在なんだけどな。”
リンクのその様子を見て、僕は信じてもらえていないことが分かった。手法を変えてみることにする。
「寂しいんだよねリンク。でもさ、ここにはたくさんの仲間がいるよ。僕はリンクとずっといるし、フォックスやマルス達だって、みんなリンクをほっとかない。でしょ?」
再び、リンクは曖昧に笑った。これも効果がないか…とレッドは落胆する。辺りはだんだんと暗くなりつつあった。
「何か問題があるの?」
リンクは表情を消した。言おうか言わまいか迷っているのがうかがえる。
「ねぇ、言ってくれないと分からないよ。」
僕はしびれを切らしてリンクに言った。それでリンクも言う決心がついたようだった。
「…君達とも、いつまで一緒にいられるのか分からない。もう君達は…オレにとって、かけがえのない存在になっているから…別れるのが相当辛いものになっているはず。だから…別れるのが怖い。」
僕は口ごもった。今まで完全に忘れていた。出会いの数だけ別れがある。この大会が終わってしまったら、みんなと…リンクと、別れなければならないのだ。それはリンクの言うようにとても耐えがたいものだろう。でも、と僕は思う。そんなことを考えてたら、出会うこともできなくなる。ここでへこたれていてはダメなのだ。それをどうやってリンクに伝えよう?
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