alive a life
□prologue
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ふと目を覚ますとそこは真っ白な空間。
上も下も右も左もあるのかさえ分からない。
何とも妙な、気の狂いそうな空間ではあるが、僕にはもう馴れた現象である。
目を覚ますという表現は間違いかもしれない。だって此処は夢の中、将又、僕の精神世界なのだから。
「よう、填」
「よく会うねぇ、観世」
まぁ最近は、此処の住人以外の妙な客がよく訪れるんだけど。
「そろそろ一人旅も限界だろ。そこで提案なんだがなぁ」
「観世からの“命令”の間違いじゃない?」
「くくっ、まぁそうとも言うな」
この自称慈愛と慈悲の象徴だというお偉い神様の性格は、何回か話しているうちにちょっと理解できたと思う。皮肉るような返しに観世は楽しそうに笑う。
「数日後、この町に金髪タレ目の生臭坊主御一行様が来るんだが、お前、そいつらについてけ」
「それって例の牛魔王蘇生実験の阻止とかいう?」
「そうだ」
「……拒否権は無いんだろーし、僕等には他に道は無いしね」
胸元を軽く押さえると、“彼”の存在を確かに感じる。
「そうそう、お前のためだな。利害一致すると思うぜ?」
「まぁね…」
「おっと、もう時間か」
観世の言う通り、僕の身体は徐々に透け始めている。もう目が覚めるのか。
「そうそう、俺のやったピアス、絶対外すなよ」
「…何度も言われなくても分かってるよ」
「じゃあな填、頑張れよ」
意識が途切れる寸前、観世が凄く優しい顔をしてそう言った気がした。
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