レヴィさん家

□兄弟喧嘩の理由
1ページ/2ページ

「だーかーら!何っ回も言わせんなよ!オヤジは来れねぇっつーの!」


「だって、先生が、おとうさんとしようねって言った!」


「だーかーらー!あ゛ぁ――――!うっぜぇマジで。おいっ!誰かマーモンどうにかしろ。」


四男のベルと末っ子のマーモンの言い合いの事の発端は、ベルが物置から、かなづちをだしてきたことだった。
マーモンに頼まれたのだ。
「日曜日のおやこ工作で使うから出して」と。
数日前、同じ保育園に通うフランが持っていたのを思い出し、「あれ?お前ら一緒に使うんじゃねーの?」とマーモンに聞いたら、兄弟で一緒に使うのではなく、クラスごとにお父さんと一緒に使うのだと説明され、そこに横から三男のスクアーロが口をはさみ、今のややこしいことになっているのだ。
スクアーロに悪意はなかった。
ただタイミングが悪かった。
スクアーロは言った。
「あ、それなー。オヤジがフランのとこに行って、俺がマーモンのとこに行くぜぇ。フランのとこは木工でモーター付きの車を作るらしいからなぁ。俺そんなのできねぇからな。」

どうやら自分のクラスには父親ではなく兄が来ることを知ったマーモンが、お父さんがいい、と駄々をこねているのだ。
そんなことで駄々をこねられても父・レヴィはこの世に1人しかおらず、工作内容からクラスを移動するのはムリな話で。


「ザン兄にフランとこ行ってもらえば?」

ベルはすぐ上の兄や長兄には名前の呼び捨てかバカにした呼び名で呼ぶのに、次男のザンザスだけは「ザン兄」と慕っていた。


「ザンザスはその日なんかの試験らしいぜぇ。」


ザンザスの通う工業高校で、何かの実技試験があるらしい。予定を調整するときに直接ザンザスから聞いたスクアーロが忘れているとは救いようがない。


「だから俺が行くんだろうがぁ。マーモンのとこは大きな缶に釘で穴開けるだけらしいからな。」


「なにそれ。ちゃちくね?だっせ。」


うーわあああーん


急に、家中に響くマーモンの泣き声。
餅のような手触りの白い頬に流れる大粒の涙。



「べっ、べっ、ベルとー…うわああーん。べっ、ベルにーっ、ああー」


しゃくりあげながら話すので要領を得ない。
幼心に、ベルにこれから作るであろうものをバカにされたのだと傷ついたのだろう。


「あー、ベル兄ちゃんがマーモン泣かしたー」


おとなしく行方を見守っていた五男のフランが口を開き、「泣かせたー」という事実にマーモンはさらに泣いた。
盛大に“自分は被害者だぞ、こんなに泣いてるんだぞ”というようにスクアーロをちらちら見ながら、見せつけるように泣いた。



「うっぜぇ。こんくらいで泣くなよな。」


「ベル!謝れぇ。」

「オレ悪くねーもん。」



そのまま、ぷいっとベルは出て行ってしまい、マーモンは泣き続けた。
家中に泣き声が響き渡り、スクアーロはげんなりとして抱きかかえたが、マーモンは泣きやまず。
おやつを与えようとしても拒否。
飲み物で釣ろうとしても無理。

結局、泣き疲れてそのまま眠るまで、ひたすら抱っこをしたスクアーロだった。


「何やってんだ俺…」



.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ