暗殺部隊
□残念な子
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ある日、金銭が大好きな強欲な赤ん坊が口元だけで笑いながら聞いてきた。
「スクアーロ、一体キミは報酬を何に使っているんだい?」
「あ゛ぁ?」
答えることができず、また答えられないはずだった。
スクアーロは報酬を使ったことがなかったのだから。
とりあえず取り出してみた目の前の通帳には0が果てしないくらい並んでいる。
スクアーロが任される任務はどれも難易度が高い暗殺ばかりで、難易度が上がるにつれ報酬の額も上がる。
アジトで寝て起きて食事して人を殺してきて風呂に入ってまた寝て起きて…の繰り返しの生活のどこに金を使うべきところがあるのか。
同じく多額の報酬をもらう他のヴァリアーメンバーのうち、レヴィは部下達をよく飲みに連れて行ったり奢ったりと面倒をみていて、意外と男らしい使い方をしているようだ。
マーモンはもちろん貯金するだけでなく
株に投資してさらに財産を増やしている。
マーモンを常に抱いているベルは武器がほぼ使い捨てな為に武器調達や服に金をかけているのだろう。
ルッスーリアは趣味に金をつぎ込み、死体マネキンに大枚を払って闇オークションを楽しんでいるらしい。
金の使い道がわからないのは自分だけだと気付き、普段使わない頭を使ってみる。
飯や酒は旨いのにこしたことはないが、別に食べられればいい。アジトにいれば専門のコックやルッスが作ってくれるし、外食は常にボスが払ってくれる。ボスとしか出かけないけど。
服はほとんど隊服だし、私服もボスが贈ってくれたものがほとんどだ。
ザンザスに忠誠を誓い、剣をふるうことが生きることであるスクアーロにとって他のものは全て興味がないことばかりだった。
しかし、普段は気にもとめていない通帳の残高だけれども、こうなってきたら使わないのが損に思えてきた。
「しししっ。バカ鮫がなに考えてんのかね?」
「ボクにまかせてくれたら、さらに増やしてあげられるのに。手間賃はもらうけどね。」
果てしなく並ぶ数字達。
これを使ってできること、したいこと。
贅沢に慣れてないスクアーロが思いつくのはどれもこれも並ぶ数字がそんなに減らないものばかりだった。
そうだ、どうせならザンザスに何か贈ろう。そこまで考えが至っても、何を贈るかでまた悩む。
普段、思考回路をそんなに使っていないスクアーロはもう頭がパンクしそうだった。
パンクしそうな頭で
「一体自分は何でこんなに追い込まれてるのか」とふと気付く。