暗殺部隊
□帰るまでが遠足です
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「う゛ぉおおおい!ジャッポーネだぜぇぇ!!着いた着いたあぁぁ!!」
空港に降り立つなりいきなり叫び出すバカな鮫。
一体、日本に着いただけで何がそんなに嬉しいのか。
日本に来るのが初めてなわけじゃあるまいし。
ああそうか、長すぎる機内でずっとバカ面を晒しながら寝てたからか、ああも元気なのは。
異国情緒たっぷりな、あちこちにある和柄の垂れ幕やら漢字やら。
“ようこそ日本”
何がようこそだ。
来たくて来たわけじゃねぇ。
前を歩く浮かれた鮫と、のんきな垂れ幕にいいようのない怒りがわき、ザンザスはスクアーロを背後から蹴り上げた。
「痛ぇ!!何すんだザンザスゥ―――――――!!」
大声がイラついたから、振り向いたスクアーロの腹に全体重を乗せた拳をふるってみた。
吹っ飛んでいくスクアーロ。
ようやく胸がスッとした。
「行くぞ、カス共。」
襟元の羽飾りを翻し、部下を従え颯爽と歩くザンザス。
その迫力に旅行者達が振り返る。中には、先ほどの暴力行為を目にしてかかわり合いたくないと目をそらしている者もいたが。
「ねぇ、ボスー次は何に乗るの?王子もう座ってるの飽きたんだけどー」
幼い時さながらにザンザスの上着の裾をひくベル。いちいち文句を取り合わないボスのかわりにルッスーリアが振り向いた。
「ベルちゃん、次はバスよ。ベルちゃんは若者なんだから立ってていいのよ。ジャポネーゼは交通機関でお年寄り達に席を譲るのが決まりらしいから。」
「しししっ。じゃあ王子とマーモン以外は全員座らなきゃな。」
「まぁ!失礼しちゃうわね!」
「貴様!ボスに何たる無礼を…」
「オッサンきもいし。」
ヴァリアー的には日常の和やかな会話。
普段なら専用の車で移動するはずなのに公共交通機関での移動なのは、ボンゴレ10代目に就任した沢田綱吉…というより、その元家庭教師の陰謀だろう。
ボンゴレのボスが日本人になり、必然的に仕事で日本に来ることも増えるだろう、なら日本文化も知っておくべきではないか…という、ザンザス的には“なにが「なら」だ”と思わないではいられない理屈。
元々、ボンゴレファミリーやその同盟マフィアには日本贔屓が多い。
それもこれも初代ボンゴレがはるばる日本に渡ったからだ。余計なことしやがって。
イタリア人ならイタリア人らしくずっとイタリアにいりゃあいいものを。
さっきの吹っ飛んだダメージも
何のその、鼻歌まじりで歩くスクアーロも、どちらかといえば日本贔屓だ。
日本には数年前にスクアーロを負かした山本武がいる。今回も会うのではないか。
非常に面白くない。
今回の来日にザンザスは乗り気じゃなかった。来る気になったのは、幼い頃から手元に置いている
青年。
この企みがヴァリアーの元に知らされた時に一番に口を開いたのがベルだった。
「へ〜。ボス、王子ジャッポーネ行きたい!行こうよ〜」
さらに、ベルを後押しするかのように
「ボス、本部が旅費出してくれんでしょ?思い切り豪遊してやろうよ。」
どこまでも金勘定が好きな赤ん坊だった。
この2人にザンザスは甘い。
気分は父親通りこしておじいちゃんだ。
バスに揺られて、日本を代表するアミューズメントパークに着いた。ここもベルの希望だった。
ちなみに、各自の希望は
マーモンが超高級老舗旅館への滞在。
ベルとルッスーリアはアミューズメントパークや日本の若者が集う場所や日本一地価の高い場所での買い物。
レヴィはボスと一緒ならどこへでもと相変わらずなことを言っていたが、ベルが希望するアミューズメントパークに頬を染めていたことは見てみぬフリをしたかった。
ザンザスにとって一番肝心なスクアーロは、美味しいマグロが食いたいだった。
なんだそれ。
もっと欲を出せ。マグロなんてイタリアでも食えるし、食ったらおしまいだし、山本武を連想させるキーワードがまず面白くない。