暗殺部隊
□白紫陽花とキミ
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眼下には、見渡す限りの白。
「マーモン見ろよー!すっげー!」
「ウム。絶景だね。」
「白い紫陽花なんてちょっと珍しいですよね。イタリアには紫陽花ってないんですか?」
自称未来のボンゴレボスの妻と言い張る少女に連れてきてもらった公園の高台。
めずらしく日本で仕事があり、ヴァリアー全員で来日したけれども、仕事は早々と終わり後は帰国するのみ。
観光するようなスケジュールの空きはないが、もめ事を起こさなければ自由行動してもいいとボスに言われ、ちょっかい出しに次期ボンゴレボスの元へ行って「どっか連れてけよ」と言ってみたらこの少女が手を挙げたのだ。
「アジサイっつーんだ?変な名前!」
イタリアにあるかどうかなんて知らない。普段は花など見ないのだから。
「しししっ!なんか白くて丸くてフワフワしてそうでマーモンみたいだなっ!」
「花に例えられるなんて思ってもみなかったけど悪くないね。」
一面に広がる白白白。
「真っ白だからさ、赤く染めたくなるよな?」
ナイフをちらつかせれば、
「ムッ。ボスに怒られるよ」
「はひっ!?手品ですかっ?」
何もわかってない様子の少女。
―――あれから数年。いや10年たったのか…。
「センパーイ…まだ歩くんですかー?ミーいい加減に疲れたんですけどー」
「うるせーよ、カエルのクセに疲れたとか生意気じゃね?あ。ここだ。」
月日が変わっても、変わらずそこにあるのは見渡す限りの白い…
「あぁ。紫陽花ですかー」
「なにお前知ってたのかよ。つっまんねー!」
「こんな見事な白い紫陽花畑は見たことないですけどねー」
「こう白いとさ、赤く染めたくならね?」
「うーわ、さすが堕王子。もう病気ですね、それー」
あの時に諫めてくれた小さな友人はもういない。
白くて丸くてふわふわの…
心の中で名前を呟き、かつてはその体温で温かだった腕の中を想う。
柵によりかかり、白紫陽花を眺める青年2人。
その容貌は目立たぬはずはなく、すぐに声をかけられた。
どこか、あの
気のせいだろうか?
「もしかして、ベルさんですかっ!?私、ハルです!はひー!懐かしいですね!」
「センパイの知り合いですかー?なんだ逢い引きならミーは先に帰りますよー」
「そんなんじゃねーし。」
ハルと名乗るこの女はそうか…あの時の。
「…あ。もしかしてこちらはあの赤ちゃんだった人ですか!?」
なんという勘違い。
これが同一人物に見えるだなんて、かつて夢中になった目ん玉くりぬきゲームを思い出す。だってこんな目ん玉なんていらなくね?
「ちげー「そうでーす。お久しぶりですー」
なにこのカエル。
ハルは用事があるとかで一言二言話すと去っていった。
「なぁ、なんなの?」
「別にー。堕王子が淋しそうだったんでー今だけなら身代わりになってもいいかなーなんてー」
「はぁ?んなこと頼んでねーっつーの。」
「これだから堕王子なんですよねー鈍感すぎて涙でてきましたー」
隣にいるのは自分なのに。
他の人を想わないで。
→あとがき