暗殺部隊
□夏の休日
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全く、どうして太陽が照りつける砂浜にいなきゃいけないのか。
あぁ、そうだ。相変わらずな鮫が「海に行きたい」とか言い出したからだ。
パラソルの下のビーチチェアでくつろぎ、本を読んでいたザンザスは海にきたいきさつを思ってため息をつき、波打ち際で一人ではしゃぐスクアーロを眺めた。
全体的に白い肌の細い体。
締まった足首。
何が楽しいのか、波の中へ飛び込んでは浮かんで波に流されて砂浜へ戻ってきて…を繰り返しては大声で
「う゛ぉぉぉっ!ザンザス―――!」
腕がちぎれるんじゃないかと思うくらいに手を振ってくる。だんだん腕が犬のしっぽのように見えてきたのは暑さによる幻覚か。
ここがヴァリアー所有のプライベートビーチで良かった。
ザンザスは、スクアーロを連れてくる海として最初は高級ホテルのビーチも頭に浮かんだが、どうせコイツのことだ、
優雅に過ごすことはできずこんな有り様だろう…と思ってこの場所を思いついた自分を誉めてやりたかった。
こんな大声で呼ばれて腕を振られては他人のフリもできまい。
それにしてもよく動く。
普段の任務も、常に数多くこなしてはまた次の血を求めて飛んでいく。
移動も足音をたて常にせわしない。
浜辺での過ごし方もザンザスとは対象的だ。
止まると死ぬ魚は何だったか、鮪だったか鮫だったか。
多分鮪だったと思うけど、目の前の鮫も止まったら死ぬに違いない。
「ザンザスー!気持ちいいぜぇ!ザンザスも泳ごうぜぇ!」
駆け寄ってきたその体についた水滴が太陽に照らされて光って、ぺったりと体についた銀糸が鈍く光って、今舐めたらきっと海の味がするに違いないとぼんやり思った。
「ザンザスも泳ごうぜぇ。」
「………」
「ひょっとして泳げねぇのか?御曹司だからな!」
「んなわけねーだろ。泳げる。」
生意気な鮫を紅い瞳で睨みつければ
「じゃあ、あそこまで競争しようぜぇ!」
と、遠目に見える島まで指差した。
「ハッ。カスが。」
それから2人で泳ぎに泳いで、でもまだ島は遠くて、ザンザスはいい加減飽きてきた。
なんでドカスの気まぐれでこんなことになっているのか。