暗殺部隊

□6月を奪う花嫁
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晴れ渡る青空。
なのに忌々しく思うのは…



“6月に結婚した花嫁は幸せになれる”だなんて言い出したバカはどこのどいつだぁ。
相手がアイツなら何月に結婚したって俺は幸せになれるぜぇ!



…アイツの結婚相手は俺じゃあねぇけどな。




ザンザスは今日、ついに結婚する。
どうして相手が俺じゃないのか、答えは簡単だ。

俺はザンザスの部下であり剣であり、男だからだ。そんなことわかりきっていた。わかりきっていたけれど、俺にとってはボスしかいないけれど、ボスはそうじゃなかった。

今日はヴァリアーの面々もいつもの隊服ではなく礼服に身を包み、暗殺する為ではなく祝う為に集う。


あの夜、ザンザスは今回の話を説明してくれた。

ザンザスから聞くまでもなく、俺は知っていたけど、本人から聞いたほうがなんだか夢の中にいるみたいだった。

悪い夢。


悪い夢以外の何物でもない。


ザンザスが見知らぬ女と結婚をするだなんて。

聞いたのは、セックスの途中だった。火照った体はたちまち冷えていった。

「表面上だけの結婚だ。あれは地位と金が欲しいだけ、俺は静かな時間が欲しいだけ。利害が一致しただけだ。」


確かに、今までザンザスは独身だったから結婚話がバンバンきた。
結婚すれば、もちろんそれはなくなる。今回のはボンゴレとほぼ同等の力をもつマフィアの娘で、いわば政略結婚だ。そういえばアイツはボンゴレの御曹司だった。
それにしても、マフィア間の和平を保つのに、ザンザスの政略結婚に頼らなくちゃならねぇなんて現ボンゴレボスはなんて情けねぇんだ。俺らはあんなヤツに負けたのか。10年前の自分と現ボンゴレボスをかっさばきたくなる気持ちを必死で抑える。
俺も大人になったもんだ。


「良かったじゃねぇかぁ、ボス!これでボスのワガママに振りまわされなくてすむぜぇ!!」


声が裏返らないように、涙がでないようにしたつもりだった。


結婚が決まってからもボスは変わらずに俺を抱いた。


手近にいるから。
ただの性欲処理。


最初から、そう割り切らないといけなかったのに。
のザンザスだと勘違いをしてしまっていた。

ザンザスの結婚はすぐさまヴァリアー内に広まった。

「スクアーロ。お前よく平気だな?王子ってば、ボスの結婚相手はてっきりお前だと思っていたんだけどー?」


平気じゃねぇけど。

「隊長ー、“この結婚に意義ある者は…”て時にもちろん挙手ですよねー?ボスを奪ってきてくださいよー」

「やっぱりカエルはバカだな。フツー、逆だろ!」

「あー、確かにー、隊長が奪われるほうがしっくり来ますねー」


お前ら何にも悩みなさそうでいいなぁ。オレもねぇけど。

だってこれは悩みではなく、ただの贅沢な願い。

ザンザスに誰も触れて欲しくない。
ザンザスには誰も抱いて欲しくない。
オレ以外誰も抱かないで欲しい。
ただの性欲処理でいいから。
今までと変わらない日々を送りたい。殴られても物を投げつけられてもいいから。
俺からザンザスを奪わないでくれぇ。


いつもの日常を過ごしながら、そうこう願っていたら、あっという間にザンザスが
新郎にふさわしい装いをする日になってしまった。
衣装のことは俺はよくわかんねぇけど、黒っぽいグレーのでなんだかすっげぇザンザスに似合ってた。

10代のガキの頃からザンザスを追いかけて、側にいて、ザンザスの色々な姿や表情を見てきたけど、今日という今日のこの姿には、何度惚れ直したかわからない。

色々な支度を終え、あと数分後には挙式と宴が始まる。よりによって俺をザンザスを呼ぶ係にした奴は嫌がらせのつもりか。


ザンザスは控え室にベスターを出し、なでながらくつろいでいた。
衣装に毛がつくぞぉ。


「そんなに見られたら穴が開いちまう。来いよ。」


あぁ、こんな日も、襟足に羽飾り。
10年前には想像もできなかったくらい優しく抱きしめられる。
その腕で、あの女も抱くのか?
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