暗殺部隊
□通じぬ想い
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初めて会ったのはお互いが10代の頃。
初対面の印象はとにかく「うるせぇ奴だ」そして「暑苦しい奴だ」だった。
その印象は、三十路に足をつっこんでも変わることはなかった。
直に触ることができなかった空白の8年も、扉越しに、氷越しにその熱気を感じていた。
今日は本部の連中との定例会議。いつものようにスクアーロだけを護衛につけて出席する。
本当は護衛なんて必要ないのだが、連れて行く理由はただひとつだけ。
結局は自分がスクアーロといたいだけなのだ。
その理由を自分自身で気づくまでには大分長い年月を要した。
消し去りたい過去から早10年。
あの乳くさいガキがボンゴレを束ねるようになるとは…
面白くはないが仕方ない。
悔しいから従わない。あくまでも9代目直属をつらぬいてやる。実は、これも虫酸が走るが、あのガキ達となれ合って見られるのは御免だった。
「ザンザス、少し2人だけで話したいんだけどいいかな?」
会議の後に、沢田綱吉にこう聞かれ、珍しいこともあるもんだ…と思った。
認めたくないが、沢田綱吉はだいぶボスらしく…いや、単にオドオドしなくなっただけか。
にこやかな顔で相手に有無を言わせないような風格は先代を思わせる。
苦手だ。
2人きりと言われたにも関わらず、スクアーロも当然のようについていく。
「悪い、スクアーロ。外してくれないかな?」
若きボンゴレボスの頼みは口先だけ軽く、雰囲気は重い。
「下がれ。」
不服そうだったスクアーロはザンザスの一言で部屋を退出していく。
「さすがだね、ザンザス。よく躾が行き届いてるよ。」
「当然だ。てめぇん所の駄犬と一緒にすんな。」
沢田綱吉の背後に控えている“右腕”をチラリと見やると、彼はダイナマイト片手に吠えていたが、ザンザスには子犬がキャンキャン鳴いているようにしか見えなかった。
それを無視して若きボスの執務室へと入っていく。
「実はね。ザンザスかスクアーロに見合いの話が来ているんだ。」
沢田綱吉がデスクから何かを取り出す。
“ザンザス か スクアーロ”
普通の見合い話なら名指しでくるはずのもの。
普通の見合いではない裏があるに違いない。
来客用のソファにどっかり座り、足を組む。
「どういうことだ?」
「さすが。察しが良くて助かるよ。」
改めて、ザンザスに向かいあって座った沢田綱吉は一通の封筒を出した。
「先方は、貴方達の関係を知ってるんだ。」
だからどうした。
とっくの昔から知れ渡っていると思うが?
スクアーロを狙う輩をどれだけ消させてきたと思うんだ。
関係を知りながら見合い話を持ってくるカスはどこのどいつだ。
沢田綱吉がボンゴレと並ぶ、とある巨大マフィアの名前を出した。
「そこは世襲制なんだけどね、一人娘なんだって。その娘さんに継がせたいらしいんだけど…」
若きボスが言い淀む。
話の筋が見えてきた。
「その娘さんは同性愛者なんだ。」
ザンザスの考えが当たった。
「その、お父さん…今のボスなんだけど。ボス直々に来た話なんだ。
偽装結婚してくれってね。結婚によって同盟を結ぶことになるし、それはボンゴレの為にも向こうの為にもなるんだけどさ…」
「なぜ、俺かスクアーロなんだ?」
本部の人間の方が適してんじゃねぇか?
「相手は君たちの関係を知ってるって言っただろ?この偽装結婚によって、もう貴方達へ山ほどきている見合い話も終わるだろうからって。」
何が可笑しいのかクスリと笑う。
「その娘さん、ザンザスと同級生だったって言ってたから。これを見たら思いだすはず。」