-永遠は論ずる身-

□1..溺夢
1ページ/9ページ



―――気付いたときはそこにいた。
その気付いたときが何度めなのかはわからないけど。
ずっと前からこうして眺めていた気もする。

月だけが照らす草原。
その中で俺はうつ伏せに倒れているようだ。
目の前には血が滴る草と、どこかの部分だった肉片。
日本刀を握ったままの右腕もあった。
一瞬、それは俺のものではないかと錯覚したけれど、この場ではどうでもいいことだ。

少し離れた先には数人の黒装束の男たちが一人の人物を囲んでいた。
乱雑になった髪と着物。
女だ。ボロボロになったその姿が痛々しい。
そのためか、日本刀だけは鮮やかに輝いて見えた。

男たちは日本刀を構えて相手の隙を窺っているようだ。
一方、女は左手に一振りの日本刀を鞘に収めたまま握りしめていた。
鍔(つば)より下の鯉口(こいくち)を持ったまま立ち尽くす姿は、成す術が無くなってしまったよう。

けれど。
これから何が始まるのか、俺は、そう、何も―――
この光景を、ずっと、以前から―――
そうだ。
(知っている――?)


女が背を向けていた男が奇声を発しながら飛び掛かかる。
女はゆっくりとその男へ振り返る。
そうして鞘を持ったままの左手を前につき出した。

男は今にも女目掛けて日本刀を振り下ろそうとしているところだった。

ドクン――と鼓動が響いた。

全てがスローモーションのように動いていき、
女の右手が柄を握りしめると、
一気にその白刃をさらけ出した―――――
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ